研究課題/領域番号 |
21H03156
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
太刀川 弘和 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10344889)
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研究分担者 |
高橋 晶 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10365629)
笹原 信一朗 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10375496)
川島 義高 明治大学, 文学部, 専任准教授 (20647416)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | モラル / 支援者支援 / 新型コロナウイルス感染症 / 医療従事者 / 心理教育プログラム / 質的研究 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年研究班で実施したモラル傷害に関わる各種実態調査の結果、ならびにシステマティックレビューで得られた知見を基に、モラル傷害予防を目的とする心理的支援プログラムを開発した。具体的には、モラルジレンマやモラル傷害の発生機序などを学ぶ動画教材の開発、モラルジレンマ解決法としての「モラルジレンマ・モラル苦悩の解決シート」の開発、モラルジレンマやモラル傷害を抱える事例の作成、ランダム化比較試験の実施に向けて、効果測定のためのアンケートフォーム作成などを毎月1回、計11回研究班会議を開いて行った。そしてこれら教育資材を昨年度作成した研究プラットフォームである「支援者のモラルとメンタルヘルスを学ぶウェブサイト」に新規ページとして実装し、ランダム化比較試験の実施環境を構築した。 また、昨年度から実施している各種調査のうち、1)新型コロナウイルス感染症対応病棟へと運用転換を余儀なくされた病棟に勤務する医療従事者のメンタルヘルスの悪化に関連する要因やその保護要因を質的研究にて明らかにするインタビュー調査は研究参加に同意いただいた大学附属病院の医療従事者12名に実施し、うち4名のデータについてパイロット研究として先行的検討を行った。2)ダイヤモンド・プリンセス号で支援活動を行った救援者のメンタルヘルスに関する調査では、分析の結果、支援活動後に誹謗中傷やモラルジレンマがあるとPTSD症状やうつ症状をきたしやすい可能性を見出した。3)自殺予防に関わる支援者のメンタルヘルス調査結果は、分析の結果、どの支援者もコロナ禍で強いストレスを受けているが、ストレス内容は電話相談員が不十分な研修や過剰なメディア報道、医療従事者が感染対策による自殺企図者への不十分な支援というように、支援役割によって異なることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3月までにモラル傷害を予防する心理的支援プログラムパッケージ(自殺予防支援者版)の開発を完了することができた。対象者の募集を行って、76名の参加登録を得ることができ、令和5年4月より同プログラムの有効性に関するランダム化比較試験を開始する予定である。各種調査は1)を除きデータ収集をほぼ終えており、1)の先行検討結果、および2)の分析結果はそれぞれ日本体力・栄養・免疫学会、日本精神科救急学会にて学会発表し、3)はInt J Environ Res Public Health誌に受理、出版された。以上のように、本研究は各分担研究者が研究を着実に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度はランダム化比較試験を実施し、本研究班が開発した心理的支援プログラムの効果検証を実施する。また、モラル傷害予防に関するシステマティックレビューの成果を学術論文にて公開する。病棟を転換した12名の医療従事者へのインタビューを逐語録化し、それをもとに質的な分析を行い、モラルジレンマ、モラル傷害に関わるメンタルヘルスの悪化やその保護に共通する要因を見出してプログラムに反映する。モラルレジリエンスを評価するモラルリジリエンス尺度の妥当性検証も完了させる。これらの研究成果をとりまとめ、学会発表、論文発表を行う。研究成果物として、モラル傷害予防プログラムの有用性が確認された場合、以後の社会実装について、さらなる研究費獲得によるプログラムのブラッシュアップや各研究分担者の所属学会等への移管など継続的な展開方法を検討する。
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備考 |
本研究のプロジェクトページとして支援者の「モラル」とメンタルヘルスを学ぶサイトを作り、研究内容、モラルジレンマ・モラル傷害に関する基礎知識を一般公開している。業績については、筑波大学災害・地域精神医学教室のHPで紹介している。
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