本研究課題では、昨年度までに先ず肺炎症モデルの陽性対照群の作成のため、抗がん剤としても使用されており、肺での炎症を惹起することで汎用されているブレオマイシン肺炎症モデルを構築した。気管内投与後3日目に、肺胞洗浄液中に炎症性サイトカインが分泌され、好中球がリクールートされていることを確認した。このシステムを応用し、タバコ由来抽出物質[一般的に使用されている3R4F Research CigaretteのDMSO抽出物(1%、バブル法にて調製)]の肺炎症モデルの構築を試み、解析を行ってきた。本年度は再現性をもって胚の炎症を誘導することが確認され、加えて脾臓細胞の分裂促進剤(コンカナバリンA)に対する反応が、タバコ由来抽出物質投与群で亢進していることを発見した。 続いて、投与経路を鼻部投与に変えたモデルマウスの構築を試みた。3R4F抽出物を50μg/shot/マウスで、3回または5回連続(インターバル24時間)で投与した。両投与群のマウスで、有意に肺での炎症細胞が対照群に比べ増加していた。特にF4/80陽性細胞(マクロファージのマーカー)の割合が増加していた。詳細な検討を現在行っている段階である。 このように、新しい投与経路によっても、タバコ由来抽出物質の生態影響を評価できる可能性が示唆された。
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