with/postコロナ時代の保健医療課題への疾病負荷の活用と実証分析

2022 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 21H03203
• 研究機関: 慶應義塾大学
• 研究代表者: 野村 周平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (10799282)
• 研究分担者: 田淵 貴大 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, がん対策センター疫学統計部部長補佐 (20611809) ; 橋爪 真弘 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (30448500) ; 大田 えりか 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (40625216) ; 渋谷 健司 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (50322459) ; 坂元 晴香 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (50738549) ; 鈴木 基 国立感染症研究所, 感染症疫学センター, センター長 (60444874) ; 齋藤 英子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 国際医療協力局, 上級研究員 (60738079) ; 米岡 大輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (60790508) ; 井上 真奈美 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策研究所, 部長 (70250248) ; 宮田 裕章 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (70409704) ; 西浦 博 京都大学, 医学研究科, 教授 (70432987)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 疾病負荷 / グローバルヘルス政策 / 超過死亡 / 新型コロナ

研究実績の概要

死亡と障害の両方の負荷を統合した包括的かつ比較可能な健康指標である「疾病負荷（Burden of Disease）」の分析は、保健政策立案や研究開発の優先順位の決定に重要な役割を果たす。しかし、日本では政策への活用がまだ限定的であるため、本研究はこれまでの疾病負荷に関する研究成果をさらに発展させ、新型コロナが日本の保健医療ニーズや保健システムに与える影響を検証することを目的としている。

当該年度では、14本の英語論文を査読付き国際誌に出版した。これらの研究は、日本における新型コロナウイルス感染症の疾病負荷と、パンデミックによる健康や社会に与える影響を調査したものである。新型コロナに関連する様々な側面を分析し、感染リスクや重症化のリスクに関する認識、死亡率、交通事故、予防行動、性感染症の報告、脳血管疾患に関連する死亡の変化など、様々な観点から疾病負荷を分析した。これらの研究は、新型コロナパンデミックの日本における疾病負荷を理解するための貴重な情報を提供し、今後のパンデミック対策や健康政策に役立てられることが期待される。

また、これまでの研究成果が評価され、研究代表者は日本が主催する2023年のG7広島サミットの国際保健アジェンダを検討する「G7グローバルヘルス・タスクフォース」の構成員に選ばれた。これにより、研究成果を政策提言に直接取り入れられる機会を得た。今後も様々な政策対話が行われる中で、より多くの政策立案者に研究成果を伝えていく予定である。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度、査読付き国際誌に14本の英語論文を出版した。これらの研究は、新型コロナウイルス感染症に関する様々な側面について明らかにすることができた。例えば、日本国民のリスク認知に関する研究、国内外の居住者の全死因死亡率の比較、新型コロナウイルス感染症流行期における結婚・離婚・出生数の変化、小児感染症の発生率の変化、健康へのアクセスの変化、感染症や脳血管疾患の発生率の変化、交通事故の発生率の変化などが含まれている。これらの研究結果は、新型コロナウイルス感染症流行期における日本の社会や健康に対する影響を深く理解する上で役立つことが期待される。

また、研究論文は厚生労働省健康局健康課が進める国民健康づくり運動（健康日本21）の最終評価報告書で引用されるなど、日本における生活習慣病やその原因となる生活習慣リスクの改善のための議論に貢献した。さらに、内閣官房健康・医療戦略室が進めるグローバルヘルス戦略策定の深化（2022年5月に発表）にも寄与できた。加えて、国際栄養学会において日本の不健康な食事に関連する疾病負荷について講演し、日本の栄養対策にも貢献した。

今後の研究の推進方策

最終年度を迎える本研究は、引き続き様々な政府統計やオープンデータ等に対し公衆衛生学、疫学、統計、数学技術を駆使し、各研究テーマ間で連携しながら、日本におけるコロナ禍の保健医療政策の課題に対する実証的分析を行なっていく。具体的には、最新の世界の疾病負荷研究の枠組み（Global Burden of Disease 2021）を利用し、新型コロナウイルス感染症の疾病負荷やリスク要因を推定を行う。また、新型コロナに関連する最新の疾患別超過・過少疾病負荷を推定し、他の傷病への間接的な影響とその地域差の定量化を継続する。

また、これまで研究成果が評価され、研究代表者は日本が議長国として主催する2023年G7広島サミットの国際保健アジェンダを検討する「G7グローバルヘルス・タスクフォース」構成員に就任し、本研究成果を政策提言に直接インプットする機会を得た。本年開催される様々な積極的な政策対話を通じて、研究成果のより多くの政策立案者にインプットしていく。

研究成果

• [雑誌論文] Effect of the COVID-19 pandemic and state of emergency declarations on the relative incidence of legionellosis and invasive pneumococcal disease in Japan (2023)
  • 著者名/発表者名: Ghaznavi Cyrus、Ishikane Masahiro、Yoneoka Daisuke、Tanoue Yuta、Kawashima Takayuki、Eguchi Akifumi、Nomura Shuhei
  • 雑誌名: Journal of Infection and Chemotherapy 巻: 29 ページ: 90～94
  • DOI: 10.1016/j.jiac.2022.08.016
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Changes in cerebrovascular disease-related deaths and their location during the COVID-19 pandemic in Japan (2023)
  • 著者名/発表者名: Nomura S.、Eguchi A.、Ghaznavi C.、Yamasaki L.、Rauniyar S.K.、Tanoue Y.、Kawashima T.、Yoneoka D.、Kohsaka S.、Suzuki M.、Hashizume M.
  • 雑誌名: Public Health 巻: 218 ページ: 176～179
  • DOI: 10.1016/j.puhe.2023.03.006
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Factors associated with the risk perception of COVID-19 infection and severe illness: A cross-sectional study in Japan (2022)
  • 著者名/発表者名: Adachi Megumi、Murakami Michio、Yoneoka Daisuke、Kawashima Takayuki、Hashizume Masahiro、Sakamoto Haruka、Eguchi Akifumi、Ghaznavi Cyrus、Gilmour Stuart、Kaneko Satoshi、Kunishima Hiroyuki、Maruyama-Sakurai Keiko、Tanoue Yuta、Yamamoto Yoshiko、Miyata Hiroaki、Nomura Shuhei
  • 雑誌名: SSM - Population Health 巻: 18 ページ: 101105～101105
  • DOI: 10.1016/j.ssmph.2022.101105
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Pre- and post-COVID-19 all-cause mortality of Japanese citizens versus foreign residents living in Japan, 2015-2021 (2022)
  • 著者名/発表者名: Ghaznavi Cyrus、Eguchi Akifumi、Tanoue Yuta、Yoneoka Daisuke、Kawashima Takayuki、Suzuki Motoi、Hashizume Masahiro、Nomura Shuhei
  • 雑誌名: SSM - Population Health 巻: 18 ページ: 101114～101114
  • DOI: 10.1016/j.ssmph.2022.101114
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Changes in marriage, divorce and births during the COVID-19 pandemic in Japan (2022)
  • 著者名/発表者名: Ghaznavi Cyrus、Kawashima Takayuki、Tanoue Yuta、Yoneoka Daisuke、Makiyama Koji、Sakamoto Haruka、Ueda Peter、Eguchi Akifumi、Nomura Shuhei
  • 雑誌名: BMJ Global Health 巻: 7 ページ: e007866～e007866
  • DOI: 10.1136/bmjgh-2021-007866
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Decreased incidence followed by comeback of pediatric infections during the COVID-19 pandemic in Japan (2022)
  • 著者名/発表者名: Ghaznavi Cyrus、Sakamoto Haruka、Kawashima Takayuki、Horiuchi Sayaka、Ishikane Masahiro、Abe Sarah Krull、Yoneoka Daisuke、Eguchi Akifumi、Tanoue Yuta、Hashizume Masahiro、Nomura Shuhei
  • 雑誌名: World Journal of Pediatrics 巻: 18 ページ: 564～567
  • DOI: 10.1007/s12519-022-00575-9
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Salaries, degrees, and babies: Trends in fertility by income and education among Japanese men and women born 1943-1975 - Analysis of national surveys (2022)
  • 著者名/発表者名: Ghaznavi Cyrus、Sakamoto Haruka、Yamasaki Lisa、Nomura Shuhei、Yoneoka Daisuke、Shibuya Kenji、Ueda Peter
  • 雑誌名: PLOS ONE 巻: 17 ページ: e0266835
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0266835
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Myanmar's coup risks a flood of vaccine-preventable disease (2022)
  • 著者名/発表者名: Lwin Kaung Suu、Ghaznavi Cyrus、Win Khine Lae、Gilmour Stuart、Hashizume Masahiro、Nomura Shuhei
  • 雑誌名: Journal of Global Health 巻: 12 ページ: 03060
  • DOI: 10.7189/jogh.12.03060
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Excess deaths from non-COVID-19-related causes in Japan and 47 prefectures from January 2020 through May 2021 by place of death (2022)
  • 著者名/発表者名: Nomura Shuhei、Eguchi Akifumi、Ghaznavi Cyrus、Tanoue Yuta、Kawashima Takayuki、Yoneoka Daisuke、Yamasaki Lisa、Suzuki Motoi、Hashizume Masahiro
  • 雑誌名: SSM - Population Health 巻: 19 ページ: 101196～101196
  • DOI: 10.1016/j.ssmph.2022.101196
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Assessment of Traffic Accidents in Japan during the COVID-19 Pandemic vs. Previous Years: A Preliminary Report (2022)
  • 著者名/発表者名: Shimizu Kazuki、Ueda Peter、Ghaznavi Cyrus、Sakamoto Haruka、Nomura Shuhei
  • 雑誌名: Healthcare 巻: 10 ページ: 860～860
  • DOI: 10.3390/healthcare10050860
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Changes in Health Care Access during the COVID-19 Pandemic: Estimates of National Japanese Data, June 2020 - October 2021 (2022)
  • 著者名/発表者名: Tanoue Yuta、Ghaznavi Cyrus、Kawashima Takayuki、Eguchi Akifumi、Yoneoka Daisuke、Nomura Shuhei
  • 雑誌名: International Journal of Environmental Research and Public Health 巻: 19 ページ: 8810～8810
  • DOI: 10.3390/ijerph19148810
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Preventive Behaviors and Information Sources during COVID-19 Pandemic: A Cross-Sectional Study in Japan (2022)
  • 著者名/発表者名: Uchibori Manae、Ghaznavi Cyrus、Murakami Michio、Eguchi Akifumi、Kunishima Hiroyuki、Kaneko Satoshi、Maruyama-Sakurai Keiko、Miyata Hiroaki、Nomura Shuhei
  • 雑誌名: International Journal of Environmental Research and Public Health 巻: 19 ページ: 14511～14511
  • DOI: 10.3390/ijerph192114511
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Recent changes in the reporting of STIs in Japan during the COVID-19 pandemic (2022)
  • 著者名/発表者名: Ghaznavi Cyrus、Tanoue Yuta、Kawashima Takayuki、Eguchi Akifumi、Yoneoka Daisuke、Sakamoto Haruka、Ueda Peter、Ishikane Masahiro、Ando Naokatsu、Miyazato Yusuke、Nomura Shuhei
  • 雑誌名: Sexually Transmitted Infections 巻: 99 ページ: 124-127
  • DOI: 10.1136/sextrans-2021-055378
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Reducing salt intake with umami: A secondary analysis of data in the UK National Diet and Nutrition Survey (2022)
  • 著者名/発表者名: Nakamura Haruyo、Kawashima Takayuki、Yamasaki Lisa、Lwin Kaung Suu、Eguchi Akifumi、Hayabuchi Hitomi、Tanoe Yuta、Tanaka Shiori、Yoneoka Daisuke、Ghaznavi Cyrus、Uneyama Hisayuki、Shibuya Kenji、Nomura Shuhei
  • 雑誌名: Food Science & Nutrition 巻: 11 ページ: 872～882
  • DOI: 10.1002/fsn3.3121
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] An alternative Japanese Approach to reducing sodium while enhancing taste and desirability (2022)
  • 著者名/発表者名: 野村周平
  • 学会等名: 第29回国際高血圧学会
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] National disability weights in Japan (2022)
  • 著者名/発表者名: 野村周平
  • 学会等名: International burden of disease conference
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] 地域におけるがん医療の課題と展望：均てん化は進んだか？ (2022)
  • 著者名/発表者名: 野村周平
  • 学会等名: 第60回日本癌治療学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] Health effects of dietary risks: evidence from the Global Burden of Disease Study (2022)
  • 著者名/発表者名: 野村周平
  • 学会等名: 第22回国際栄養学会議
  • 国際学会 / 招待講演
• [図書] 実践グローバルヘルス: 現場における実践力向上をめざして (2022)
  • 著者名/発表者名: 野村周平
  • 総ページ数: 233
  • 出版者: 杏林書院