研究課題/領域番号 |
21H03280
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
栗田 耕一 近畿大学, 工学部, 教授 (90455171)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歩行計測 / 認知症 / 非接触計測 / 静電誘導 |
研究実績の概要 |
本研究は高齢者の認知症の「兆し」を歩行機能の低下から検知する技術を開発することを目的としている。独自開発した超高感度静電誘導電流検出センサを使用し、被験者に装置を装着することなく歩行信号を検出するシステムを蓄積する。計測した歩行データを学習データとして、機械学習や深層学習により学習モデルを構築する。得られた学習モデルを用い、高齢者が認知症に至る前にその「兆し」を捉えるディープラーニングを用いたAIによる客観的評価ツールを確立する。当該年度は主に、学習モデルの構築と深層学習による認知症の兆し検出と不自由歩行パターンの評価及び学習モデルの検証を実施した。歩行パターンとして、すくみ足歩行、片麻痺歩行、体幹不安定歩行等の歩行波形のスカログラムを学習データとして、深層学習により歩行機能障害の程度を識別する学習モデルを構築した。識別に用いたニューラルネットワークは畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である。その結果、約93%の精度で歩行機能障害の程度を識別可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の異なる不自由歩行パターンの学習モデルを構築し、深層学習により歩行機能障害の程度の識別が可能であることが分かった。得られたデータには不自由歩行動作における不自由の程度に応じた特徴量の変化に加えて、個人固有の特徴が検出されており、歩行機能障害の程度が大きくなるにつれて、個人固有の特徴が消失する傾向があることが明らかになった。また、不自由歩行動作の計測を実施していく中で、被験者の歩行中の腕振り動作が歩行の安定性に寄与していることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、認知症の兆しと認知症タイプを客観的に評価する評価ツールの構築に取り組む予定である。まず、客観的評価ツールの試作を実施し、臨床でも容易に使用可能で安価な評価ツールを製作し、その有効性を検証する。超高感度静電誘導センサと学習モデルが搭載されたワンボードマイコン及び小型モニタの一体型で構成されるシステムを製作する。さらに、評価ツールの運用上の課題を抽出する。被験者は超高感度静電誘導センサを中心に半径3mの円周上を1回歩行するのみで、簡便に歩行波形を取得し歩行機能を客観的に評価するシステムを試作する。このシステムにより、ステップ幅以外の歩行パラメータと歩行波形を同時に取得する。
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