研究課題/領域番号 |
21H03287
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
和田 安弘 長岡技術科学大学, 工学研究科, 理事・副学長 (70293248)
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研究分担者 |
大石 潔 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (40185187)
南部 功夫 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (40553235)
垣内田 翔子 徳山工業高等専門学校, 機械電気工学科, 准教授 (90638537)
佐藤 貴紀 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (60840759)
武田 美咲 東京工業高等専門学校, 電気工学科, 助教 (10879828)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 運動時間計画 / 運動軌道 / 計算論的モデル / 脳 / 健康寿命 |
研究実績の概要 |
【課題1】運動時間決定を内包した運動軌道生成モデルの複雑な運動への拡張 二次元平面上の上肢二点間到達運動のダイナミクスモデルを基に運動時間と手先終端精度の関係を検討した。モデルをより一般化するためモデルの検討を進めており、令和3年度は、腕ダイナミクスモデルの重力項を考慮したモデル化の検討を推進した。 【課題2】 (1)腕ダイナミクスモデルのパラメータが速度と精度の関係にどのような影響を与えるかを調査するため、速度と精度の計算論モデルを用いた感度解析シミュレーションを行った。具体的には、腕ダイナミクスパラメータである上腕と前腕の質量および運動軌道が変化した際に速度と精度の関係がどのように変化するかを調査した。その結果、同じ速度条件でも、質量が増加するに伴い手先終端誤差が大きくなること、運動方向によって手先終端のばらつき方が大きく異なることを示した (2) 仮想現実(VR : Virtual Reality)による実験環境の構築 VR環境下で自身のダイナミクスと異なる腕を制御するVR環境を構築し、被験者実験を実施した。今回、腕のダイナミクスパラメータのうち、慣性モーメントおよび粘性を変更したときに、変更前と変更後の変化を解析した。腕の慣性モーメントについては、被験者自身の腕よりも短い腕のとき、長い腕のとき、そして極端に大きいときの慣性モーメントの3つの条件で検証を行った。3名の被験者にて到達運動実験を行ったところ、どの条件でも終点の運動誤差は非常に小さいものとなり、運動適応が確認された。一方で、粘性を小さくした場合(0.5倍)と大きくした場合(5倍)について被験者7名で同様の実験を行ったところ、粘性を大きくした条件では学習ができず、適応が確認されなかった。このことから、ダイナミクスパラメータのうち、粘性が運動適応や運動機能の変化に影響を与える可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、【課題1】運動時間決定を内包した運動軌道生成モデルの複雑な運動への拡張において、腕ダイナミクスモデルから運動精度の低下等の運動機能の変化の評価・推定研究を推進した。 仮想空間(VR)を用いた実験環境を構築し、実験システムの検証を行って、システムの妥当性を確認した。また、【課題2】運動時間と精度、腕ダイナミクスの関係の実験的検討では、腕ダイナミクスモデルのパラメータが速度と精度の関係にどのような影響を与えるかを調査するため、速度と精度の計算論モデル(Takeda et al., 2019)を用いた感度解析シミュレーション研究を実施している。さらに、仮想現実(VR : Virtual Reality)による実験環境の構築 VR環境下で自身のダイナミクスモデルと異なる腕を制御するVR環境を構築し、被験者実験を実施した。被験者7名の実験を行い、結果、粘性を大きくした条件では学習ができず、適応が確認されなかった。このことから、ダイナミクスパラメータのうち、粘性が運動適応や運動機能の変化に影響を与える可能性が示唆された。 また、これまで環境的に実施できなかった屋外での運動計測実験が可能な計測システム設計を進めた。実際に広い年齢層に渡る被験者実験は新型ウイルス感染症対策により実施できていないが、これまでと比較してより簡易に研究室外環境でのモーションキャプチャ可能なシステムを構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
【課題1】運動時間決定を内包した運動軌道生成モデルの複雑な運動への拡張 運動軌道生成の始点から終点までの運動時間は、Fitts’Lawのように運動時間が精度によって推定されるとすれば、 運動司令ノイズを仮定することで、運動時間を定めることが可能である。既に提案しているモデルに軌道予測のための内部モデルを組み込むことで、 2点間運動における運動時間・運動軌道生成モデルの開発に成功しているが、さらなる被験者実験・解析を進め、モデルの妥当性の実証を強化すると共に、以下の3つの検討を進める。① 腕ダイナミクスモデルの重力項を考慮したモデル化、② 二次元平面上の運動から三次元空間内の運動への拡張、③ 二点間のみならず経由点がある場合の到達運動への拡張。 【課題2】運動時間と精度、腕ダイナミクスの関係の実験的検討 (1) 計算機シミュレーションによるパラメータの感度解析:運動精度は、運動ダイナミクス、軌道及び運動時間等が複雑に絡みあって決定されると考えられる。従来、あまり影響が考慮されてい ないが 、精度に対して運動軌道(パターン)による影響も大きいと考えられ、 運動軌道・運動時間・運動精度・ダイナミクスパラメ ータの関係を計算機シミ ュレーションによる詳細な検討を継続する。 (2) 仮想現実(VR : Virtual Reality)による実験環境の構築:自身のダイナミクスと異なる腕を制御するVR環境を構築し、被験者実験を継続し、ダイナミクス等の変更前後の変化を解析することで、精度の影響因子の解析を行う。実際の腕ダイナミクスを変更する加齢模擬体験装具をつけての追実験も行いVR実験 結果の検証を行い、VR実験の妥当性を担保し、VR実験を推進する。また、研究室外環境でのモーションキャプチャ可能なシステムを構築し、新型ウイルス感染症の状況を見つつ実際に広い年齢層に渡る被験者実験を進める。
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