研究課題/領域番号 |
21H03293
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
齋藤 悠城 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40758702)
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研究分担者 |
齋藤 貴子 (千見寺貴子) 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (40452982)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞老化 / メカニカルストレス / 骨格筋 / 再生 |
研究実績の概要 |
老化細胞は安定的に細胞周期を停止する一方、代謝的には非常に活発で、サイトカインやケモカイン、エクソソームなど様々な生物活性を有する因子を分泌する。この分泌現象を老化関連分泌表現型(Senescence-associate secretory phenotype: SASP)と呼ぶ。このSASPによって、老化細胞は周囲の細胞に働きかけて組織を再生へ導く一方で、老化細胞の蓄積は組織の変性や慢性炎症を引き起こすことも知られている。これまでの研究でメカニカルストレスによって細胞老化を制御できる可能性を見い出してきたことから、リハビリテーションによる細胞老化を制御することで組織再生を促す、セノリハビリテーションという新しい治療アプローチの可能性を見出した。本年度は、老化細胞に特徴的なメカニカルストレスの感受性を明らかにするため、in vitroで老化細胞モデルを作成し、その遺伝子発現を解析した。老化細胞において、いくつかの細胞骨格やインテグリンなど、増殖細胞とは異なるいくつかの特徴を明らかにした。また、伸展培養装置を用い、細胞にメカニカルストレスを負荷することで、メカニカルストレスによる細胞老化誘導メカニズムの解明と誘導後の老化細胞の表現系解析を実施した。特定の強度で細胞老化が誘導されること、また慢性炎症状態を模擬した成長因子やサイトカインで刺激と共に、メカニカルストレスを負荷することで、異なる表現系の細胞老化が誘導されることもわかってきた。これらの研究を継続することで、セノリハビリテーションという細胞・分子レベルから細胞老化を制御する新たな治療基盤の創成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、in vitroにおいて老化細胞に特徴的なメカニカルストレスの感受性の解析が進んでいる。また、メカニカルストレスによる正常細胞の老化誘導についても、メカニカルストレスの強度や慢性炎症状態を模擬した成長因子やサイトカインで刺激することで異なる表現系を有する老化細胞を誘導できているため。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に得られた老化細胞に特徴的な表現系をより詳細に解析し、老化細胞の力学的な弱点を同定することで、正常な細胞には影響が少なく、老化細胞選択的にアポトーシスが誘導できるシグナルおよびメカニカルストレスの種類や強度の同定をin vitroで実施する。令和5年に実施予定のin vivoでの治療効果およびメカニズム検証に向けて、令和4年度の後半から疾患マウスモデルを作成し、セノリハビリテーションの効果の検証を小さなサンプルサイズで開始する。
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