これまでに申請者は、損傷周囲においてリハビリテーション依存的にAMPA受容体シナプス移行を促進することにより大脳皮質損傷後の機能回復を誘導することを明らかにした。しかしながら、AMPA受容体がシナプスに集積することでどのように運動機能を補ったのかについては不明である。また、AMPA受容体はGluA1~4サブユニットが存在し、海馬や大脳皮質においてはGluA1/1・GluA1/2・GluA2/3といった組み合わせの複合体によりイオンチャネルが形成され、それぞれの役割が異なると考えられている。このようなことから、どのような神経回路を担う神経細胞にどのようなタイミングで、さらにはどのようなサブユニット複合体のAMPA受容体が集積することで失われた運動機能が補われているのかについて明らかにすることを目的として本研究計画を実施した。運動野を損傷した動物の大脳皮質から各脳領域に投射する細胞を逆行性トレーサーを用いて可視化することに成功し、それぞれの領域に投射する神経細胞からパッチクランプ法により興奮性シナプス伝達としてのmEPSCを記録することが出来たため、大脳皮質損傷後に強化される経路が明らかになりつつある。さらには光照射依存的に活性酸素を放出する光増感物質を用いた分子機能不活化法であるCALI(chromophore-assisted light inactivation)法を用いてAMPA受容体サブユニット特異的な機能阻害に成功した。
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