研究課題/領域番号 |
21H03302
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 明良 京都大学, 医学研究科, 助教 (50762134)
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研究分担者 |
黒木 裕士 京都大学, 医学研究科, 教授 (20170110)
西谷 江平 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (70782407)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / 理学療法 / リハビリテーション / ラット / 関節軟骨 |
研究実績の概要 |
関節軟骨を主体とする疾患である変形性膝関節症(Knee osteoarthritis:以下、膝OA)の罹患者は非常に多く、その大部分は一次性膝OAであると考えられている。これまで、理学療法介入は膝OA治療の第一選択肢として挙げられてきた。しかしながら、膝OA病態へ及ぼす効果は不明なままである。これを解決するために、本研究では申請者らが開発した非外科的局所膝関節軟骨圧迫損傷モデルラットに対して理学療法介入等の効果を検証し、その作用メカニズムの解明を試みる。研究2年目として、自発走行運動負荷を与えるための回転かご付きケージの介入研究を行った。その結果、非外科的局所膝関節軟骨圧迫損傷モデル群の方が、コントロール群よりも回転かごの回転数が多い傾向が認められた。しかしながら、圧迫損傷が生じた大腿骨関節軟骨部における変性の進行は観察されなかった。以上のことから、本モデルにおいて圧迫損傷後の関節軟骨に対する自発走行運動介入は、関節軟骨変性を助長しないことが示唆された。また、本モデルに対する間葉系幹細胞移植治療効果検証を行ったところ、圧迫損傷による関節軟骨細胞死が抑制されることが明らかとなった。今後、運動介入と細胞移植治療との相乗効果検証を実施する。また、細胞外マトリックスの老化がα-Klothoのエピジェネティックな制御に影響を与えることを明らかにし、軟骨細胞の生理に影響を与える新しい力学的感受性メカニズムを見出した。さらに、本モデルの長期的な病態解析を行うための網羅的遺伝子発現解析のプロトコルを確立した。そして、早期OAに細胞分裂関連の遺伝子発現変化が生じていることを示唆するデータを得た。介入実験による細胞分裂関連遺伝子発現変化を検討すると共に、機械学習を応用した早期膝OA予測モデルの開発を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の動物実験施設の大幅な改修による、モデル動物に対する介入実験の遅れの影響が続いている。また、自発走行運動負荷介入の短期的な影響が検出されなかったため、介入方法を限定してより長期的な介入研究を実施中である。一方で、病態解析のための機械学習を応用した早期膝OA予測モデルの研究開発など、成果を上げつつあるプロジェクトもある。以上のことから、本研究課題の進捗状況はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として、ラットが自由に走行距離と速度を決定できる回転かご付ケージを使用した自発走行運動および間葉系幹細胞移植治療を施行することで、各方法の変形性膝関節症(Knee osteoarthritis:以下、膝OA)防止効果を検証し、作用メカニズムを継続して探求する。昨年度の研究により、短期的な自発走行運動では損傷部関節軟骨に及ぼす影響は観察されなかったことから、脛骨関節面にOA様変化が緩徐に進行するという本モデル動物の特徴を活かし、長期的な介入効果を組織学的、分子生物学的に検証する。また、非外科的局所膝関節軟骨圧迫損傷モデルの長期的な病態についてさらに解析するために、RNAシークエンス技術による網羅的な解析を実施中であるが、これを継続して行う。これは、膝OAの発症・進行機序の理解につながり、理学療法介入の標的候補分子を探索する。さらに、得られた大規模なRNAシークエンスデータを活用し、機械学習を応用した早期膝OA予測モデルの開発も進める。
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