研究課題/領域番号 |
21H03306
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
国分 貴徳 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (10616395)
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研究分担者 |
金村 尚彦 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20379895)
村田 健児 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 助教 (30792056)
酒井 崇匡 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70456151)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 前十字靭帯損傷 / 自己治癒 / 運動 / 細胞外マトリクス |
研究実績の概要 |
完全損傷した前十字靭帯 (Anterior Cruciate Ligament: ACL) を自己治癒に導く保存的治療法の確立へ向け,本年度は治癒したACLの力学的強度は正常の60%であったという課題の解決へ向けた実験胴部モデル研究を実施した.この不十分な治癒が生じる要因は,治癒部に線維芽細胞が凝集するところまでは正常な治癒反応と同等の反応を示すが,その後に靭帯を形づくり,力学的強度の回復に重要なCollagen線維を含む細胞外マトリクスの合成が不十分なまま終わる点にある.そこで,この損傷ACL治癒過程における細胞生物学的な治癒反応を,メカノバイオロジー機構を介して促進させるため,治癒過程に適した運動介入(リハビリテーション)を行うことの功罪を評価した.その前段階として,ACL損傷の発症頻度における性差を考慮し,我々のACL治癒モデルにおける治癒反応の性差を比較したところ,雌の方が治癒反応が低い可能性を示すデータが得られた.このデータを基盤として,8週齢の雌性Bl6マウスを対象とし,ACLを非外科的に完全断裂させた後,脛骨の前方変位を制動してACLの自己治癒を導き,術後4週時点でトレッドミル運動を開始した.この時に膝関節の制動を除去して治癒人体に負荷をかける群と膝関節の制動を継続した群を設定し.介入開始後8週での膝関節不安定性計測と、組織学的評価を実施した。結果として,両群間で膝関節の不安定性は差を認めず,組織学的な観察においても群間で差を認めなかった.これらの結果は,損傷後4週時点からの運動介入は損傷後に自己治癒したACLに有害事象を招かないというポジティブな結果と解釈できる.このデータを基盤として,治癒ACLの細胞外マトリクス合成を促進する運動の負荷量を同定に繋げるための基礎データを確立することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで本実験系において主として使用してきたモデル動物を,ラットからBL6マウス系に変更し,前十字靭帯損傷モデル及びその自己治癒モデルを確立した.また,それらを対象として,ACL治癒モデルにおける精査の検討を行い,その存在を確認することができた.また,運動介入効果の検証を実施していく上での基盤となるデータを取得することができた.以上は,当初予定して研究計画の進度と概ね同等であるため以上の区分とした.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,運動介入の内容の検討と,運動プログラムにおける負荷量,強度,頻度などの変数の検討を行い,それらの因子が治癒反応にもたらす影響についての検討を行うことを予定している.特に損傷靭帯の治癒成熟において重要となる細胞外マトリクス合成への影響を中心に解明を進めていく.
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