研究課題/領域番号 |
21H03321
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
木場 智史 鳥取大学, 医学部, 准教授 (40565743)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セントラルコマンド / 光遺伝学 / ラット / オレキシン / 運動 / 交感神経 / 自律神経 |
研究実績の概要 |
申請者は中脳歩行誘発野(MLR)から延髄吻側腹外側野への投射経路がセントラルコマンド(CC)の脳内回路の一端であることを明らかにしていた(Koba et al. Nat Commun, 2022).本研究はその経路を制御する上位脳領域の解明を目的として企画した.具体的には「ラット中脳歩行誘発野に投射する視床下部外側野のオレキシン産生神経(LH-MLR/Orx神経)はMLRを制御することでCC機能を生成する」との仮説を検証している.そのためにラット脳を対象とした神経回路解析実験,光遺伝学,オレキシン産生神経のみに遺伝子工学的介入を可能とする遺伝子改変ラットなどを活用した実験生物学的研究を展開している.2021年度には「ラットLH-MLR/Orx神経は運動に伴って興奮する」「オレキシン産生神経には交感神経活性能と歩行誘発能がある」ことを明らかにしていた.2022年度には自発走行中に標的神経細胞集団を選択的に抑制しながら生体信号を記録する実験から,「オレキシン産生神経は自発走行時の四肢の運動制御と血圧調節に必要である」ことを発見した.そして「LH-MLR/Orx神経には心血管反応の生成能と歩行誘発能がある」「LH-MLR/Orx神経は自発走行時の四肢の運動制御と血圧調節に必要である」ことを示唆するデータを得た.ただしこれらの示唆を結論付けるには異なったアプローチからの追試が必要であり,さらなる研究の実施を次年度に予定している.さらに,細胞膜とシナプス前領域(活性帯)を遺伝子工学的に可視化する実験手法を確立し,オレキシン産生神経の投射先と軸索分岐の調査を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に計画していた研究は全て実施され,新知見を得ることが出来た.また2023年度の計画研究のための予備実験も概ね実行できた.本計画の完遂に目途を立てることが出来ている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に示唆された知見「LH-MLR/Orx神経はCC機能の生成に必要十分である」を,異なった光遺伝学的アプローチから再検証する.またCCの脳内回路の全貌解明を目指し,運動時のオレキシン産生神経の活動を制御する神経細胞集団の解析に取り組む.さらに,申請者の異動に伴う研究環境の変化により,P2レベルでの遺伝子組換え実験を行うことが可能となった.これまでの研究成果を基盤としたうえで,新研究環境において構築する生体信号の長期記録の実験系を活用し,オレキシン神経によるCC機能生成機能に対する加齢・病態・回復の影響調査へと研究を発展させる.
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