研究実績の概要 |
本計画の目的はオレキシン産生神経(Orx)神経によるセントラルコマンド(運動制御コマンドによる自律神経制御の脳内メカニズム,CC)の生成能の調査であった.2022年度までに得た知見「①Orx神経は自発走行によって興奮する」「②Orx神経にはCC機能の生成能がある」「③Orx神経は走行運動中のCC機能の生成に必要である」に加え,2023年度に得た新知見「Orx神経は延髄吻側腹外側野などの循環中枢領域の神経とシナプス接続する」をまとめることで「Orx神経系はCCの脳内回路の一端である」と結論し,誌上発表した(Narai et al. J Physiol, in press).また,「自発走行によって興奮する,Orx神経のうち中脳歩行誘発野(CCの中枢回路の一端)に投射するものは,Orx神経が分布する視床下部領域のなかでも尾側外側領域に局在する」ことを突き止め,その成果も誌上発表した(Narai et al. Yonago Acta Med, 2024).さらに,「MLR投射性Orx神経は自発走行中のCC機能の生成に必要である」ことを示すデータを得,その結論の吟味を継続している.その吟味に有効な,新規光遺伝学タンパク質Bipolesの有効性を確認している.以上より,“運動”におけるOrx神経の重要な機能が明らかとなった.さらに,2023年度の研究代表者の異動に伴い,超長期の生体信号記録が可能となった新環境を活用し,Orx神経機能に対する加齢・病態の影響を調査する発展的研究の予備調査を実施した.
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