研究課題/領域番号 |
21H03324
|
研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
田巻 弘之 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (40253926)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 骨 / マイクロCT / ひずみ |
研究実績の概要 |
機械的ストレス(力学的因子)は骨量の維持、増進に必須の因子であり、その骨組織への機械的刺激の感受に骨細胞がメカノセンサーとしての役割を果たしている。骨細胞は骨基質に多く存在し、骨組織がひずむことで活性化し、骨細胞間ネットワークによって感受・反応を広めることができる。このひずみ特性と骨細胞ネットワーク(粗密)は若齢期や高齢期など加齢により異なることが考えられており、これらの特性の違いにより運動や機械的刺激の効果の現れ方が異なるのか調べた。 まず若齢期及び中高齢期ラットの脛骨を対象に荷重によって生じる骨ひずみ特性を調べた。各年齢のラット脛骨内側骨幹部に小型箔ストレンゲージを貼付し、卓上小型フォースプレート上で鉛直方向に種々の強度で荷重し、その時の骨ひずみ及び床反力信号を記録し、最大ひずみ、最大床反力、最大・最小strain rate (microstrain/sec)を計測した。いずれの年齢期においても荷重が大きくなるのに従い最大骨ひずみ値は指数関数的に大きくなった。若齢期は中高齢期に比較してより大きくひずみやすい傾向を示した。また、荷重時最大strain rate及び荷重リリース時の最小strain rateは骨ひずみピーク値と相関関係にあり、若齢期の方が中高齢期よりも大きかった。また骨破断強度検査時に記録した骨stiffnessは高齢期の方が大きく、骨ひずみは若齢期の方が大きかった。さらに、若齢期及び中高齢期ラットの脛骨を対象に3次元マイクロCT撮影を行い、骨量を計測し、3次元骨梁構造解析により、海綿骨においては骨梁幅、骨梁長、骨梁数、骨梁連結密度等を、また皮質骨では皮質骨幅や断面積、total porosity等を評価した。総じて、若齢期よりも高齢期では海綿骨量は低いレベルにあるが、硬くひずみにくい特性を有することが理解された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は主に中高齢期を対象に骨のひずみやすさなどのバイオメカニカルな特性を実測し、骨への荷重の大きさとの関係式を明らかにすることができ、また若齢期との差異を検証できた。本研究では骨組織のひずみやすさ、それを感受する骨細胞のネットワーク、またそれらを制御する可能性のある骨内感覚神経支配との関連性を明らかにすることを課題としており、本年度は若齢期から高齢期までの骨ひずみ特性や骨強度などの力学的な特徴について検証することができた。これらの成果は、骨形成の一連のプロセスにおける、(骨が)ひずむ→(骨細胞が)受取る→(骨芽細胞が)つくる、の最初のステージを検証でき、今後の研究遂行において重要な基盤的データを収集できた。また次年度対象とする高齢・不動ラットを継続して作成しており、研究計画は順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は前年度までに明らかにできた骨細胞や骨内神経のイメージング、荷重に対する骨ひずみ特性の各年齢層における違いに関する基礎的知見を基に、力学的刺激効果と骨細胞ネットワーク(粗密)との関連やネットワーク再構築に及ぼす神経系の役割について調べる予定である。検証方法は組織レベルから細胞レベルで、バイオメカニカルな検証からCT撮影による3次元構造解析、また組織細胞の免疫組織化学染色等による顕微鏡解析等の方向から進める予定である。具体的評価項目としては、CTデータからは骨微細構造解析を行い骨量、骨量幅、骨梁数、骨梁間距離、骨梁連結密度、皮質骨幅や断面積、total porosity等を評価の対象とする。骨強度との関連を検証するために脛骨の3点曲げ試験により骨破断強度、最大強度、スティフネス、elastic modulus等を評価する。顕微鏡解析では骨細胞密度や骨細胞を欠いた骨小腔(empty lacunae)の割合等を統計的に評価する。各データを取りまとめて、骨量関連パラメータと骨細胞ネットワークとの関連性や骨細胞ネットワークの変化と骨内神経分布変化との関連性について検証する予定である。
|