研究実績の概要 |
骨基質に多く存在する骨細胞は骨組織への機械的刺激を感受するメカノセンサーとしての役割があり、また骨細胞ネットワークを介してひずみ刺激を広めることが考えられている。骨量の維持、増進にメカニカルストレス(ひずみ)は必須の因子のひとつであり、ひずみ刺激の程度や頻度などのいわゆるひずませ方の違いにより、骨量維持増加効果の現れ方に影響するか調べた。次に、感覚神経が骨量維持に影響するかTRPA1阻害剤を用いて検証した。 まず、若齢期ラットの脛骨を対象に、電気刺激誘発性の筋収縮を行った時の骨ひずみ特性を生体で調べた。骨ひずみの大きさは収縮様式の違いにより異なり、伸張性収縮時が等尺性収縮時や短縮性収縮時よりも大きかった。また、最大骨ひずみ率(strain rate)も同様であった。この骨ひずみ特性を骨への機械的刺激処方に適用し、骨ひずみ処方を若齢期ラット脛骨に、4週間に0,1,2,3,5,9回の頻度で実施した。3次元マイクロCT撮影による骨量評価では、5回及び9回/4週間の頻度で無処置群よりも骨量が高い値を示し、海綿骨骨梁幅、骨梁長、骨梁数も高値であった。伸張性収縮時の骨ひずみを介入する場合、少なくとも週1回の頻度で骨量増加効果が示唆された。 次に、骨内感覚神経の骨量維持に対する影響を調べるために、TRPA1阻害剤を1週間間隔で4週間投与して骨量を評価した。Vehicle群に比べて阻害剤投与群は骨量、骨梁幅、骨梁数、骨梁連結密度は低値を示した。感覚神経の薬理的阻害により正常な骨量増加や骨梁構造維持に負に作用することが示され、これらの感覚神経は若齢期の骨代謝にポジティブに関連している可能性が示唆された。
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