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2021 年度 実績報告書

細胞内カルシウム恒常性破綻によるアスリート特有の代謝障害の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H03327
研究機関国士舘大学

研究代表者

羽田 克彦  国士舘大学, 体育学部, 教授 (60506228)

研究分担者 山本 欣郎  岩手大学, 農学部, 教授 (10252123)
二国 徹郎  東京理科大学, 理学部第一部物理学科, 教授 (50360160)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード細胞内カルシウム濃度 / 分子栄養学 / シナプス可塑性 / NMDA受容体 / アスリート
研究実績の概要

本研究の目的は、アスリートによくみられる細胞内カルシウム恒常性を破綻させる要因を分子栄養学に基づいて抽出し、それらを解決することで彼ら特有の内科的疾病予防やパフォーマンスの向上に役立てることである。細胞内カルシウム恒常性の破綻はアスリートに対し、種々の問題を引き起こす。内科的疾病だけでなく、中枢・末梢神経・自律神経機能や筋収縮バランスの低下等によるパフォーマンス低下にも繋がることが示唆されている。ところが今まで細胞内カルシウム恒常性に着目したアスリートの内科的疾病に対するアプローチは殆ど行われていない。そこで申請者は細胞内カルシウム恒常性に関与する栄養素の代謝を分子栄養学的に解析することで、細胞内カルシウム恒常性と臨床症状やパフォーマンスとの関係について解明する。さらにその改善を図ることによってアスリート特有の様々な疾病の予防やパフォーマンス向上に繋がるかを検証する。
アスリートのパフォーマンスは、多くの要素が影響を与えるが、脳機能がその重要な要素の一つである。脳は運動制御や感覚処理、判断能力などの重要な機能を担っており、これらの機能は神経可塑性によってサポートされる。特にシナプス可塑性は重要な役割を果たし、トレーニングや反復練習によって神経回路の結合が変化し、情報伝達が効率的に行われるようになり、これによって運動パフォーマンスが向上することが知られている。さらに、運動の経験やトレーニングは神経回路の再構築や新しいシナプスの形成を促す場合もある。その結果、アスリートは柔軟な運動パターンや高度な技術を獲得することができる。そこで令和3年度は、細胞内カルシウム恒常性とシナプス可塑性との関係について数値計算を用いて解析を進めた。その結果、興奮性シナプスに対して適度な背景ノイズが印加されることにより長期増強が起こりやすくなることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では「細胞内カルシウム恒常性破綻によるアスリート特有の代謝障害の解明」を目指している。新型コロナウイルスのパンデミックにより、研究の共同作業が制限され、アスリートへの研究が難しくなった。このため、研究の進捗には遅れが生じた。しかし、我々は厳しい状況の中でも前進するため、数値計算によりNMDA受容体をモデル化を行い、細胞内カルシウム恒常性とシナプス可塑性の関係を解析した。その結果、興奮性シナプスにおいて、適度な背景ノイズが与えられると、長期増強(LTP)が促進されることが分かった。この発見は、アスリート特有の代謝障害の解明に向けて重要な進展である。なぜなら、アスリートのパフォーマンスに影響を与える脳の機能のうち、運動制御や感覚処理、判断能力などの機能はシナプス可塑性によってサポートされているからである。
現在はまだ研究の進捗には遅れがあるが、今回の結果は有望であり、今後も実験や解析を進める予定である。我々はアスリートの健康とパフォーマンス向上に貢献するため、細胞内カルシウム恒常性破綻とアスリートの代謝障害やパフォーマンスに関わる要因についてさらに精査する予定である。

今後の研究の推進方策

今後は、細胞内カルシウム恒常性破綻の指標として疼痛知覚モデルを用いた動物実験を行う予定である。細胞内カルシウム恒常性と疼痛知覚との関係は、複雑な相互作用が存在している。細胞内カルシウム濃度の上昇は神経興奮性を増加させる可能性があり、カルシウムイオンは神経細胞内で重要なシグナル伝達分子であり、疼痛刺激が存在する場合には神経興奮性の高まりが考えられる。また、細胞内カルシウムの変動は、疼痛情報の伝達に関与するシグナル伝達経路を制御する可能性がある。炎症は疼痛の原因の一つであり、細胞内カルシウム恒常性と密接な関係がある。さらに、細胞内カルシウム恒常性に関与するカルシウムチャネルは、疼痛制御に重要な役割を果たすことが知られている。疼痛知覚と細胞内カルシウム恒常性の関係を深く理解するためにはまず、特定のカルシウムチャネルの役割や発現パターン、機能を詳細に解析する必要がある。また、細胞内カルシウム恒常性の制御機構に焦点を当て、カルシウムの取り込みや排出、結合タンパク質や輸送体の役割を明らかにする必要がある。
そこで今後は以下に焦点を当てたい。
1.カルシウムチャネルの役割の解明: 疼痛制御に関与するカルシウムチャネルの種類や機能の詳細な解析をすすめる。特定のチャネルの活性化や阻害が疼痛の発生や伝達にどのように影響するかを明らかにする。
2.細胞内カルシウム恒常性の制御機構の解明: 細胞内カルシウムの恒常性を維持するためのメカニズムについての詳細な解析を行う。特に、カルシウムの取り込みや排出、結合タンパク質や輸送体の役割に焦点を当てることで、疼痛制御におけるカルシウムの役割を明らかにする。
疼痛知覚モデルを利用することにより、細胞内カルシウム恒常性破綻とシナプス可塑性、そしてアスリートのパフォーマンスに影響を与える脳機能との関連性が明らかになることが期待される。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Numerical Simulation: Fluctuation in Background Synaptic Activity Regulates Synaptic Plasticity2021

    • 著者名/発表者名
      Takeda Yuto、Hata Katsuhiko、Yamazaki Tokio、Kaneko Masaki、Yokoi Osamu、Tsai Chengta、Umemura Kazuo、Nikuni Tetsuro
    • 雑誌名

      Frontiers in Systems Neuroscience

      巻: 15 ページ: 771661

    • DOI

      10.3389/fnsys.2021.771661

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 大学生男子陸上長距離走選手の不定愁訴においてヘム鉄・ビタミン B 群が著効であった一症例2021

    • 著者名/発表者名
      右代 啓祐, 大湊 八重子, 牧 亮, 金子 雅希, 羽田 克彦
    • 雑誌名

      The annual reports of health, physical education and sport science

      巻: 40 ページ: 81-85

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] トップアスリートにおける分子栄養学的易感染性対策(症例報告)2021

    • 著者名/発表者名
      金子雅希,大湊八重子,羽田 克彦
    • 雑誌名

      The annual reports of health, physical education and sport science

      巻: 40 ページ: 87-93

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 顕微鏡用簡易CO2インキュベータの制作(続報)2021

    • 著者名/発表者名
      櫻井勝、横井修、山崎時生、竹田悠純、蔡承達、羽田 克彦、金子雅希
    • 雑誌名

      The annual reports of health, physical education and sport science

      巻: 40 ページ: 151-154

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 肺由来ヒト線維芽細胞に対する次亜塩素酸水の細胞毒性2021

    • 著者名/発表者名
      蔡 承達、櫻井 勝、羽田 克彦
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会

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公開日: 2023-12-25  

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