研究課題/領域番号 |
21H03331
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
小池 博之 日本医科大学, 医学部, 講師 (20821771)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨格筋 / シングルセル解析 / マクロファージ / オルガノイド / 細胞間相互作用 / 骨格筋幹細胞 / 再生 |
研究実績の概要 |
骨格筋の再生は、骨格筋幹細胞が、活性化、増殖、分化という段階で筋線維へと成熟する過程である。この過程は周囲の間質細胞により制御されており、マクロファージの関与が報告されている。本研究では、マクロファージがどのような分子により骨格筋幹細胞の機能を制御しているか明らかにすることを目的として、再生中のマウス骨格筋内の細胞のシングルセル解析を実施した。取得した遺伝子発現プロファイルから、再生過程において活性化骨格筋幹細胞とマクロファージが取り交わしているシグナル経路の候補を発見した。候補分子を高頻度に発現するマクロファージサブタイプで特異的に発現している表面抗原マーカーについて探索し、当表面抗原を用いてマクロファージサブタイプをフローサイトメーターで単離することに成功した。当マクロファージ亜集団が欠損したときに骨格筋再生が阻害されるか、試験管内で検証した。検証では、再生過程のマウス骨格筋由来細胞から構築した骨格筋オルガノイドを用いた。骨格筋幹細胞が筋線維へと成熟する過程で変動するマーカー遺伝子の発現解析と免疫染色から、当マクロファージ亜集団を除いたときに活性化骨格筋幹細胞マーカーの発現が減少し、骨格筋線維への成熟が阻害されていることが確認された。また生体内での機能解析も実施した。これまでに候補として抽出されたシグナル経路の阻害剤および中和抗体をマウスへ投与し、骨格筋再生が阻害され、活性化骨格筋幹細胞の頻度が減少していることも確認した。以上の結果から、シングルセル解析で得られた骨格筋幹細胞とマクロファージ間での相互作用が、活性化骨格筋幹細胞の機能制御を介して、骨格筋再生に寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に沿って、2年目に行う予定であった計画を遂行した。具体的には、これまでに候補として抽出されたシグナル経路の阻害剤および中和抗体をマウスへ投与し、骨格筋再生が阻害されるか、活性化骨格筋幹細胞の頻度が減少するか検証した。 また、当マクロファージ亜集団がどのように出現しているか明らかにした。色素を骨格筋再生モデルマウスへ投与し、経時的に解析することでマクロファージ亜集団の由来を探索した。シングルセル解析により系譜解析を併用し、再生過程において、どのような時期に当マクロファージ亜集団が生じるかも明らかにした。 これらの成果をもとに、次年度も当初の計画書に沿って研究を進行していくことが可能である。 現在までの進捗状況は、計画書に従っておおむね順調であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
再生中の骨格筋組織細胞の1細胞RNAシークエンス・ATACシークエンス解析を実施し、骨格筋幹細胞と免疫細胞が取り交わしているシグナル経路の特定を目指す。遺伝子発現およびエピゲノムの統合プロファイルからリガンド-受容体ペア解析を行い、再生過程において活性化している候補因子と、それを発現する細胞に特異的な細胞表面抗原を特定する。また、空間的トランスクリプトミクス10X Visiumによる再生期の骨格筋組織の解析を行い、細胞間相互作用を空間的に捉える。特定された細胞表面抗原が利用可能かどうかフローサイトメーターを用いたソーティングにより確認し、ソーティングした細胞の遺伝子発現解析を行う。 骨格筋オルガノイドを用いて、マウスのin vivo 1細胞RNAシークエンス解析から得られた細胞間相互作用の機能検証を行う。特定した筋再生に関わる因子のインヒビター添加実験により骨格筋幹細胞の分化が阻害されるかどうか、筋線維マーカーの免疫染色および遺伝子発現解析で比較する。骨格筋オルガノイドを用いた筋組織修復メカニズム解析とin vivoのシングルセルRNAシークエンス解析とを並行して進める。
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