本研究の目的は、サルコペニアと呼ばれる筋量の低下に関連する筋再生不全におけるマクロファージの役割とメカニズムを解明することである。筋再生は骨格筋幹細胞が活性化・増殖・分化するプロセスであり、その制御においてマクロファージが重要な細胞であることが知られている。しかし、マクロファージは多様なサブタイプに分けられ、その特性や相互作用は十分に理解されていない。そこで本研究では、マウス骨格筋損傷モデルにおけるシングルセル RNA シークエンスでマクロファージサブタイプとそのシグナルを同定し、フローサイトメトリーでマクロファージサブタイプを分取して骨格筋幹細胞との相互作用を観察するという手法を用いた。これらの手法により、再生中の骨格筋組織に含まれるマクロファージは多様なサブタイプに分類可能であることを確認し、その中で一つのマクロファージサブタイプが増殖している骨格筋幹細胞と密接に相互作用していることを示唆した。また、そのマクロファージサブタイプを高頻度に濃縮するフローサイトメトリー条件を見出した。本研究は、サルコペニア予防・治療法開発に向けた筋再生不全の分子機構解明に貢献することが期待できる。
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