仮想環境下において、立位と目標指向型運動の制御について実験研究を行った。 【実験1】下肢の目標指向運動を学習する際の軸足の姿勢制御を検証した。運動課題は、立位時に仮想環境下においてボールをキックし、目標値に到達させるものとし、外乱無し試行を150回、ボールが反時計回りに15度回転する回転外乱試行(被験者は外乱がおこっていることが分からない)を200回、その後、ウォッシュアウト試行を150回、計500回の仮想キック動作を行った。その結果、軸足は自分の運動によってバランスが崩れることを予測し、蹴り足の学習と並行して予測的姿勢制御を学んでいることが明らかとなった。さらに軸足の予測的姿勢制御は、蹴り足の学習よりも緩やかに進む傾向があることがわかった。 【実験2】ヘッドマウントディスプレイを装着し、転倒リスク下において姿勢制御と目標指向型運動制御の関係性を検討した。運動課題は、ヘッドマウントディスプレイ画面内で落下する標的の落下位置に全身の左右方向の動きに連動するカーソルを到達させることであった。 落下位置に、誤差が安定して小さい範囲と落下位置に応じて誤差が増大する範囲が確認された。線形混合効果モデルによりカーソルを動かす移動距離に関わらず標的の落下位置自体が誤差に影響を与えることが分かった。本実験により姿勢制御の戦略によって目標指向型運動が変化することが示唆された。 本年度は、コロナウイルス感染症拡大防止のため、本学本研究科の倫理委員会により被験者の皮膚を研磨する表面筋電図を取得することができなかった。そのため、表面筋電図から計算する筋シナジーを算出することができなかった。
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