立位から歩行に動作が移行する不安定な姿勢環境下における冗長自由度簡略化の観点から転倒回避戦略に関する実験を行った。 【実験1】立位時に身体をさまざまな方向に傾けた不安定な立位姿勢時にさまざまな方向に歩行の一歩目を行うステップ課題を行った。課題中、下肢16筋から表面筋電図を取得した。その結果、立位を傾けた方向にステップ課題を行うと、筋シナジーの数は4個であり、立位を傾けた方向と違う方向にステップ課題を行うと、筋シナジーの数は5個以上であった。このことから、立位から歩行への移行する不安定な姿勢でも自由度が簡略化されていること、ステップ課題が複雑になるほど、筋シナジーの個数が増えることが明きからになった。 【実験2】ヘッドマウントディスプレイを装着し、仮想環境下において高さの異なるまたぎ動作中の筋シナジーを検討した。課題中、下肢16筋から表面筋電図を取得した。立位から歩行動作の移行中に障害物を跨ぐという不安定要素が増えると、筋シナジーの個数も増えることが分かった。また、障害物を跨ぐ、先導脚と後続脚の筋シナジーは異なり、後続脚は先導脚の情報をもとに、自由度簡略化して障害物を回避していることが示唆された。また、高さがたかくなればなるほど先導脚の役割が重要となり、先導脚の筋シナジーの個数は増え、後続脚の筋シナジーは変化しなかった。 本年度から、コロナウイルス感染症拡大防止の実験規制が緩和され表面筋電図を取得することが可能となった。
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