研究課題
リン代謝調節の破綻は成長遅延のみならず、腎臓病、骨代謝異常をはじめとする慢性疾患発症に関与し、臓器の老化進行に関与することが示唆されている。Klotho遺伝子は、リン調節を介する抗老化因子として同定され、その役割は、リン調節ホルモンFGF23の共受容体として作用である。Klotho/FGF23システムは、全身の老化を制御するが、このシステムには、そのスイッチをOn/Offにする新規タンパク質の存在が想定されている。我々は、Klotho-regulatory factor (P-TRAP: Phosphate transporter-associated protein)を見出し、そのノックアウトマウスを解析すると、明らかにKlotho/FGF23システムの消失が確認された。本研究では、Klotho/FGF23/P-TRAPシステムの解析を行い、抗老化因子を制御するミネラル代謝系を解明する。令和3年度における研究では、1)P-TRAP欠損によるFGF23過剰産生メカニズムの解明に関する検討ではP-TRAPの発現臓器である腎臓とFGF23産生臓器である骨(骨細胞)との繋がりを解析するため、腎臓に高発現する分泌タンパク質を解析し候補分子を絞ることができた。2)過剰FGF23全身における作用では、P-TRAPグローバルノックアウトにおける各臓器の炎症、石灰化が発症していないことを明らかにした。そこでP-TRAPグローバルノックアウトノックアウトマウスの疾患誘導モデルを作製し進めている。3)P-TRAP-NaPi2ネットワーク解析に関しては、P-TRAP-NaPi過剰およびノックダウンモデル細胞を確立しつつある。4)リン以外のミネラルに対するP-TRAPのFGF23制御に関しては、in silicoデータベース解析を用いて解析を進め関与するミネラルを絞り多ミネラル連関を検討中である。
3: やや遅れている
P-TRAPlox/loxマウス作製、TRAPグローバルKOマウスの詳細な基本解析も進めながら、P-TRAPグローバルKO疾患誘導モデルを作製し解析を進めている。これらは、これまでの蓄積した解析技術を利用することで進めることができている。新型コロナウイルスの影響で、担当する大学院生の自宅待機などが発生し一部予定した実験が推進できなかった。
今後も詳細に解析を進めていく。1)P-TRAP欠損によるFGF23過剰産生メカニズムの解明に関する検討では候補分子について解析していく。さらにconditionalノックアウトマウスの交配、解析等に入る。2)過剰FGF23全身における作用では、P-TRAPグローバルノックアウトノックアウトマウスにおける保護作用が起こるメカニズムを解析する。3)P-TRAP-NaPi2ネットワーク解析では、P-TRAPノックダウンモデル細胞においてノックアウトマウスと同様な結果が得られるか、またそのメカニズムを解析する4)リン以外のミネラルに対するP-TRAPのFGF23制御では、P-TRAPグローバルノックアウトマウスの解析を中心に行う。また今後はP-TRAP自体を調節するメカニズムにも焦点を当てる予定である。令和4年度より分担者が他大学へ移動したため、新たに分担者を追加したことで今後の研究に支障はないと考えられる。
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: 1-16
10.1038/s41598-022-10409-3
J Med Invest
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