研究課題
肝臓の様々な代謝酵素遺伝子の発現は摂食状態に応じて主にホルモンにより遺伝子転写制御レベルで制御され、糖・脂質代謝の恒常性を維持している。一方、糖尿病では、摂食依存的な遺伝子発現調節システムが破綻し、肝臓の脂質合成系および糖新生系酵素遺伝子の発現の病的亢進が脂肪肝と高血糖の原因となる。そのため、肝臓における摂食依存性の遺伝子発現制御メカニズムの解明は、糖尿病・代謝疾患研究における重要な研究課題である。本研究では、肝臓の組織マクロファージであるクッパー細胞と肝細胞の相互作用に着目し、肝臓マクロファージ由来因子による肝細胞の遺伝子発現調節と、その肝代謝と病態に与える影響を明らかにする。令和5年度は、クッパー細胞における摂食依存性の遺伝子発現の上流の制御経路の同定を試みた。そのために、まずクッパー細胞特異的CreマウスであるClec4f-Cre-tdTomatoマウスとInsr floxマウスを交配してクッパー細胞特異的インスリン受容体欠損マウスであるInsr flox/flox; Clec4f-Cre-tdTomato+/-マウス(KC-Insr KO)を作製した。次にKC-Insr KOマウスとそのコントロールのInsr flox/flox; Clec4f-Cre-tdTomato-/-マウスから、摂食時、もしくは絶食後にクッパー細胞と肝細胞を単離して、RNA-seqによる遺伝子発現解析を実施した。その結果、クッパー細胞において摂食依存性に調節されている分泌因子の一部は、インスリン受容体により制御されていることが明らかとなった。また、KC-Insr KOの肝細胞では脂肪酸の不飽和化酵素を含む複数の遺伝子の発現変動がみられた。これらの検討から、インスリンによるクッパー細胞由来因子の調節が肝細胞の脂質代謝制御に果たす役割が明らかとなった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Immunology
巻: 24 ページ: 1825~1838
10.1038/s41590-023-01631-w