研究課題/領域番号 |
21H03388
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
三澤 拓馬 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (20880694)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 免疫系 / 肝臓 / 脂肪分解 / 脂肪合成 / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
予備検討の結果、栄養制限によって野生型マウスの脂肪組織量は大きく低下するが、T細胞やB細胞を欠損するRag2-/-マウスの脂肪組織量はほとんど変化しないことが明らかとなった。この結果に基づき、脂肪の分解制御に免疫系が重要な役割を担っていると仮説を立て本研究に着手したが、意外なことに脂肪の分解を担うリパーゼの発現レベルは野生型マウスとRag2-/-マウスの脂肪組織でほぼ同程度であることが明らかとなった。また、脂肪の分解産物である脂肪酸やグリセーロールの血中濃度も両者でほぼ同程度であったことから、Rag2-/-マウスでは必ずしも脂肪を分解するための能力が減弱しているわけではないことが明らかとなった。解析の過程で、Rag2-/-マウスの肝臓が栄養制限下で真っ白に変色するという大変興味深い現象に気がつき、またその原因は肝臓に蓄積した脂肪であることが明らかとなった。肝臓が脂肪の主な合成場であることを考慮すると、栄養制限下のRag2-/-マウスでは脂肪の分解効率が低下しているわけではなく、むしろ反対に脂肪の合成を促進することで、分解された脂肪を補うような機構が働いている可能性が考えられた。そこで2022年度は既知の脂肪合成経路に着目し解析を進めたが、いずれの経路も栄養制限や免疫細胞の有無に関わらず正常に機能していることが判明した。更なる解析の結果、Rag2-/-マウスの肝臓では絶食を開始した直後から脂肪の構成要素である脂肪酸の濃度が飛躍的に高まることが明らかとなった。このことは、免疫系が脂肪酸の体内動態になんらかの作用を及ぼす可能性を示唆しており、2023年度はその部分に焦点を当て解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は脂肪の合成に関わる既知の経路と免疫系との関わりを検証した。脂肪はグリセロールと脂肪酸から構成される。グリセロールと脂肪酸は、それぞれ異なる経路を経て合成され、肝臓で各種反応を経て脂肪に変換される。グリセロールの合成を担うglyceroneogenesis経路は免疫細胞の有無に関わらず正常に機能していた。Srebf1、Srebf2、ChREBP、 Fasn、 Acacb、Scd1といった酵素群は肝臓における脂肪酸合成に重要な役割を担うが、その発現レベルは野生型とRag2-/-マウスでほぼ同程度であった。さらに、脂肪酸とグリセロールの結合に関わる酵素群の発現制御にも免疫系の関与は見出せなかった。以上のことから、免疫系は脂肪の合成に影響を与えないと結論づけた。その後の解析の結果、Rag2-/-マウスの肝臓では絶食を開始した直後から脂肪酸の濃度が飛躍的に高まることが明らかとなった。このことは免疫系が肝臓へ向けた脂肪酸の供給経路になんらかの作用を及ぼす可能性を示唆しており、2023年度はその部分に焦点を当て解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は脂肪酸の体内動態に着目して解析を進める。肝臓に輸送される脂肪酸の主な供給源は、脂肪組織と食事である。Rag2-/-マウスにおいてもlipolysisは通常通り誘導されることから、脂肪組織から肝臓へ向けた脂肪酸の輸送に免疫系の関与はないと考えている。食事に含まれる脂肪酸は、まず小腸で吸収される。脂肪酸は、その大きさから短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、そして長鎖脂肪酸の三つに分類されている。このうち、短鎖および中鎖脂肪酸は門脈を通じて肝臓に直接輸送されるが、長鎖脂肪酸はカイロミクロンと呼ばれるリポタンパク粒子に格納されたのち、リンパ管から取り込まれて全身に運ばれる。そこで、まずは小腸における脂肪酸の吸収能、次いで門脈血中の脂肪酸濃度、末梢血中のカイロミクロンの粒子数、そしてそれらが肝臓に運ばれるまでの過程に栄養制限や免疫系が及ぼす影響について解析を進める。
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