本研究では、遠隔操作ロボットにおける通信遅延や感覚情報伝送の不完全性による操作性の悪化を改善するため、機械学習を用いてロボットに感覚情報や操作の意図を予測し、先回りして提示することで通信遅延を隠ぺいし、操作性を向上させることを目的としている。 自動車における車線維持機能に代表されるように、オペレータの操作を補助する機構自体は古くから提案されてきた。しかし、誤ったガイダンスを提示することで却って操作性を悪化させてしまう可能性をはらんでいた。そこで、本研究では、AIの推論結果に対する“自信”に応じて人に提示するガイダンスの強度を動的に変化させることで、人の操作を阻害しない自然なガイダンス提示を可能とするシステムを開発した。開発システムは、上半身人型ロボット、力触覚デバイス、人の操作を模倣できるように学習されたニューラルネットワークから構成される。力触覚デバイスとロボットのグリッパ位置は連動しており、人は力触覚デバイスを介してロボットを操作できる。ニューラルネットワークは時々刻々変化するロボット頭部カメラ画像を入力として、次時刻にロボットが取るであろう姿勢を予測し、その姿勢へと近づくようなガイダンスを力触覚デバイスに提示することで人の操作を補助する。この際、力触覚ガイダンスを、不確実性を伴ったガウス分布として予測することで、推論に対する不確実性を加味したガイダンス提示(つまり、AIが自らの推論結果に自信があるときは強いガイダンスを提示し、自信がないときは弱いガイダンスを提示する)を実現している。実験の結果、不確実性を加味しない場合と比較して、タオル折り畳みに要する時間を、16.2%削減できることが明らかになった。
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