研究実績の概要 |
今年度は以下の2点に主に注力した。
第一は、前年度末より開始した、LLM (Large Language Model) を用いたアルゴリズムの進化に関してである。当研究課題の開始時点では、GE (Grammatical Evolution) を用いた手法を採用していた。GE は、常に文法的に正しいコードを出力するため、効率的にアルゴリズムを進化させられるというメリットがあるものの、もともと規定した文法の範囲内でしかコードが生成されないため、進化の幅が制限される。LLM を使うことで、その制限を緩和することを目指し、研究を行った。LLM を使う場合は、LLM にどのような指示を与えるかが重要になる。我々は、近年数多く発表されている、プロンプトエンジニアリングに関する研究成果を調査し、効率的な進化を行うための手法を模索した。その結果、LLM を使用することで、GE では生成不可能、かつ、輻輳制御として動作することが可能なアルゴリズムが生成可能であることを確認した。その一方、性能という意味では、まだ GE による結果を大きく上回るところまでは到達していない。今後は、性能に関する改善方法を検討した上で、結果を国際会議で発表する予定である。
第二は、エージェント評価の際に用いられるシミュレーション環境に関する進化方式の再検討である。これまでは、通信経路上の通信機器が多いほど難易度が高くなる、等の経験則に基づいて環境の難易度の調整を行っていた。しかし、そのような方法での制御では、調整の粒度のコントロールに課題がある。そこで、理論的な裏付けに基づいて、難易度の定量的な評価を行うことを目指した検討を実施した。具体的には、複雑ネットワーク上のデータ転送に関する Tadic らの理論的な成果 [Intl. J. of Bifurcation and Chaos, Vol. 17, No. 7 (2007) 2363-2385] を参照し、それに基づいた難易度調整の実現を目指して、シミュレーション環境の自動生成手法の検討を進めた。
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