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2022 年度 実績報告書

近似計算を伴う画像処理コンパイラの理論体系化

研究課題

研究課題/領域番号 21H03465
研究機関名古屋工業大学

研究代表者

福嶋 慶繁  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80550508)

研究分担者 前田 慶博  東京理科大学, 工学部電気工学科, 助教 (80843375)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード画像処理 / ドメイン固有言語 / 近似計算 / 画像処理コンパイラ / 近似コンパイラ / 実時間画像処理
研究実績の概要

目的: 画像処理の応用範囲の広がりにより,画像処理の高速化需要は増加の一途をたどる.これに対応するべく登場した画像処理専用プログラミング言語 Halideは多くの影響を与えたが,コンパイラの制約から画像処理最大の特徴である,近似・間引きを使うことができない.本研究では,この視覚特性を最大限活かすコンパイラを構築するために,汎用的に使える近似高速化パターンをコンパイラに導入する.そして,人の主観に近い画質評価指標やコンパイラ最適化に必 要な計算順序パターンをヒントにして自動的に近似高速化を行う.更には,ハードウェア最適化まで実現することで,圧倒的な高速化を実現する画像処理コンパ イラの確立を目指す.
計画: 2022年度の予定は「近似パターンの推論機能の検討および作成」と「画質評価機能の構築」,「プログラミング言語としての生成」であった. 3D LUTによる汎用高速化アルゴリズムの検討および次元圧縮による汎用的な高速化を検討し論文誌として投稿した.また,減衰型重みの動的な近似演算命令の作成と自動的な最良値の探索方法を検討し,国内研究会で発表している.画質評価機能の構築では,人の知覚限界をうまく評価できるような新たな計測方法を行い,検証しやすい画像符号化劣化を例にしてデータベースを構築した.加えて,汎用の近似画像処理に関する評価も現在データベースとして構築中である.プログラミング言語としての生成では,汎用畳み込みの短時間フーリエ変換による高速化や,量子化による整数畳み込みの高効率化方法を専用ドメイン固有言語として開発し,現在発表準備中である.また,このような流れを汎用化するためにアップサンプリングを例にした高速化フローの検証を行った.その他,国内で機械学習におけるコンパイラによる高速化に関する招待講演を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画: 2022年度の予定は「近似パターンの推論機能の検討および作成」と「画質評価機能の構築」,「プログラミング言語としての生成」であった.そして,最終年度では,それらをプログラミング言語として生成することを目指している.これらの検討項目は密接に関係しあっており,いくつかのパターンについて検討している.
まず,任意の画像処理に対して高速化可能なアルゴリズムとして3DLUTによる近似高速化アルゴリズムを新たに検討した.またこれを演繹的にパラメータ設定するための画質評価データセットの試作と,その評価関数の構築を進めている.またこれは規則的なパターンの一種である.引き続きこれらを進めるともにドメイン固有言語としてまとめていく.
次にまた,空間的な間引きではなく量子化による高速化として典型的な2次元畳み込みを整数演算で行う時の最高効率の演算を検討した.既存ライブラリの性能を大きく上回る性能を発揮しており,発表の準備を進めている.
他にも,典型的な演算関数の近似として画像処理によく用いられる減衰型の関数の近似関数を作成し,これまでの計算よりも高速に動作することを検討した.現在は誤差関数に応じて自動的にパラメータ決定可能である.今後は人の主観的な判断をベースにした誤差関数に変更して近似高速化エンジンとして取り込む予定である.
加えて,周波数空間に変換して情報を間引く方法として短時間フーリエ変換によるフィルタが提案されているが,これを高効率に記述可能なドメイン固有言語として作成した.また,処理の高速化の全体の流れを検討するために処理手順の多いアップスケーリングを対象にして簡易開発,DSL開発,個別最適化のフローを検証し,なにがどこまで高速化できるのかを検討した.複数のアプローチによりいくつかの成功をおさめ始めており,今後これらをまとめる.

今後の研究の推進方策

今年度は最終年度であり,これまでの成果をプログラミング言語としてまとめるステージと考えている.これまで複数のアプローチで取り組んできたが,各研究は,4つのステップに分解できる. (1)近似アルゴリズムを決定しそれを記述する部分,(2)近似度合いを決定する部分,(3)実処理のアルゴリズムを記述する部分,(4)最適化する部分であり,既存の画像処理専用言語プログラミング言語Halideは(3)と(4)を担当している.本研究では,畳み込みによる高速化の研究は,Halideをバックエンドにもつ(1)~(4)の言語をサポートしたものに相当し,前年度試作したランダム間引きによる成果も同様の範囲である.一方で,(2)に関しては人の主観ではなく単純なエラー関数でユーザーが与えて決定している段階にとどまるため,まずはそこを拡張する.加えて,言語として導入できていないものを同様の方向性で拡張することを進める.また,畳み込みの高速化や,アップスケーリングを事例に取った高速化ではHalideでは記述不可能な最適化を施している.現在は,それをHalideのようなスケジュール変更機能をある程度カバーできるようにマクロやtemplate機能を使ってDSLとしてその部分を記述している.このような記述方法を汎化し,より広範囲の記述が可能なように拡張していく.

備考

各論文のプロジェクトページ

  • 研究成果

    (33件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (4件)

  • [雑誌論文] Retinex-Based Relighting for Night Photography2023

    • 著者名/発表者名
      Oishi Sou、Fukushima Norishige
    • 雑誌名

      Applied Sciences

      巻: 13 ページ: 1719~1719

    • DOI

      10.3390/app13031719

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 方向性Cubic 補間における高速化手法の性能評価2023

    • 著者名/発表者名
      野上遥貴,福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会画像工学研究会(IE)
  • [学会発表] Sliding DFTを用いた畳み込みフィルタの効率的な記述2023

    • 著者名/発表者名
      金高倭士,前田慶博,福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会画像工学研究会(IE)
  • [学会発表] Performance Evaluation of Halide Auto-Scheduler with Directional Cubic Convolution Interpolation2023

    • 著者名/発表者名
      Haruki Nogami, Sou Oishi, Tomohiro Sasaki, Yoshihiro Maeda, and Norishige Fukushima
    • 学会等名
      International Workshop on Advanced Image Technology (IWAIT)
    • 国際学会
  • [学会発表] Principal Component Analysis for Accelerating Color Bilateral Filtering2023

    • 著者名/発表者名
      Kazuya Ishikawa, Sou Oishi, and Norishige Fukushima
    • 学会等名
      International Workshop on Advanced Image Technology (IWAIT)
    • 国際学会
  • [学会発表] Performance Evaluation of Image Convolution with WebAssembly2023

    • 著者名/発表者名
      Sou Oishi, Haruki Nogami, Kazuya Ishikawa, and Norishige Fukushima
    • 学会等名
      International Workshop on Advanced Image Technology (IWAIT)
    • 国際学会
  • [学会発表] 機械学習の中間言語表現とそのハードウェアアクセラレータ2023

    • 著者名/発表者名
      福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会総合大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 短時間フーリエ変換による高速な広範囲畳み込みのドメイン固有言語表現2023

    • 著者名/発表者名
      金高倭士,前田慶博,福嶋慶繁
    • 学会等名
      画像センシングシンポジウム(SSII)
  • [学会発表] 仮想パターンを使用したディスプレイ投影によるカメラキャリブレーション2023

    • 著者名/発表者名
      長縄侑樹,福嶋慶繁
    • 学会等名
      画像センシングシンポジウム(SSII)
  • [学会発表] 方向性Cubic補間による画像アップスケーリングの高効率実装2023

    • 著者名/発表者名
      野上遥貴,福嶋慶繁
    • 学会等名
      画像センシングシンポジウム(SSII)
  • [学会発表] 丁度可知差異によるニアロスレス圧縮画像の画質評価2023

    • 著者名/発表者名
      本田宗一朗,前田慶博,福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会画像工学研究会(IE)
  • [学会発表] 局所コントラスト変換画像のウェーブレット変換によるエッジを考慮したマルチスケール処理2023

    • 著者名/発表者名
      林晃平,前田慶博,福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会画像工学研究会(IE)
  • [学会発表] 符号化劣化のJust-Noticeable Differenceに基づいた画質評価2023

    • 著者名/発表者名
      本田宗一朗,福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会東海支部 卒論発表会
  • [学会発表] 重み再割り当てによるロングテール重みをもつ円形カーネルの正確な畳み込み2023

    • 著者名/発表者名
      ノグチジオゴ,福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会東海支部 卒論発表会
  • [学会発表] フーリエ級数展開を用いた局所コントラスト変換によるエッジ保存型ウェーブレット変換2023

    • 著者名/発表者名
      林晃平,福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会東海支部卒論発表会
  • [学会発表] Halideを用いたDCTに基づく定数時間フィルタの効率的な記述2022

    • 著者名/発表者名
      金高倭士,福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会東海支部卒業研究発表会
  • [学会発表] マルチスケール画像処理における複雑なデータアクセスパターンの効率的な自動生成2022

    • 著者名/発表者名
      野上遥貴,福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会東海支部卒業研究発表会
  • [学会発表] ディスプレイを用いた仮想パターンによるカメラキャリブレーションの自動化2022

    • 著者名/発表者名
      長縄侑樹,福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会東海支部卒業研究発表会
  • [学会発表] Structural Similarity Indexのパラメータ最適化による再定式化2022

    • 著者名/発表者名
      大石創,福嶋慶繁
    • 学会等名
      電子情報通信学会信号処理研究会(SIP)
  • [学会発表] 仮想パターンを使用したディスプレイ投影によるカメラキャリブレーション2022

    • 著者名/発表者名
      長縄侑樹,福嶋慶繁
    • 学会等名
      画像符号化シンポジウム(PCSJ)/映像メディア処理シンポジウム(IMPS)
  • [学会発表] サンプリング密度による畳み込みの空間重みの代替表現2022

    • 著者名/発表者名
      福嶋慶繁
    • 学会等名
      画像符号化シンポジウム(PCSJ)/映像メディア処理シンポジウム(IMPS)
  • [学会発表] カラーバイラテラルフィルタリングを高速化するための主成分分析2022

    • 著者名/発表者名
      石川加寿也 ,大石創,福嶋慶繁
    • 学会等名
      画像符号化シンポジウム(PCSJ)/映像メディア処理シンポジウム(IMPS)
  • [学会発表] CPUマイクロアーキテクチャに応じた整数2次元畳み込みの高効率ベクトル化2022

    • 著者名/発表者名
      近藤拓海,前田慶博,福嶋慶繁
    • 学会等名
      画像符号化シンポジウム(PCSJ)/映像メディア処理シンポジウム(IMPS)
  • [学会発表] サブ/スーパーガウシアン分布関数の近似高速化計算2022

    • 著者名/発表者名
      小島史也,前田慶博,福嶋慶繁
    • 学会等名
      画像符号化シンポジウム(PCSJ)/映像メディア処理シンポジウム(IMPS)
  • [学会発表] 近似バイラテラルフィルタのJust-Noticeable Differenceに基づく画質評価指標2022

    • 著者名/発表者名
      大石創,前田慶博,福嶋慶繁
    • 学会等名
      画像符号化シンポジウム(PCSJ)/映像メディア処理シンポジウム(IMPS)
  • [学会発表] スライディング周波数変換を用いた畳み込みフィルタのドメイン固有言語2022

    • 著者名/発表者名
      金高倭士,前田 慶博,福嶋 慶繁
    • 学会等名
      画像符号化シンポジウム(PCSJ)/映像メディア処理シンポジウム(IMPS)
  • [学会発表] 方向性Cubic補間を利用したHalideオートスケジューラの性能評価2022

    • 著者名/発表者名
      野上遥貴,福嶋慶繁
    • 学会等名
      画像符号化シンポジウム(PCSJ)/映像メディア処理シンポジウム(IMPS)
  • [学会発表] 局所コントラスト変換によるウェーブレット変換2022

    • 著者名/発表者名
      林晃平,福嶋慶繁,前田慶博
    • 学会等名
      信号処理シンポジウム
  • [学会発表] Basic Study on Domain Specific Description of Convolution with Sliding DFT2022

    • 著者名/発表者名
      Yamato Kanetaka, Yoshihiro Maeda, and Norishige Fukushima
    • 学会等名
      International Workshop on Image Sensors and Imaging Systems (IWISS)
    • 国際学会
  • [備考] MIDD: Meikoudai Image Distortion Dataset

    • URL

      https://norishigefukushima.github.io/iqanearlossless/

  • [備考] Relighting Night Photography

    • URL

      https://norishigefukushima.github.io/RelightingUpNightPhotography/

  • [備考] TilingPCA4CHDGF

    • URL

      https://norishigefukushima.github.io/TilingPCA4CHDGF/

  • [備考] GaussianFourierPyramid

    • URL

      https://norishigefukushima.github.io/GaussianFourierPyramid/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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