本年度は、主として以下の研究項目を実施した。 研究項目①-1:視覚刺激提示による乗り心地向上技術の開発:乗り物酔いの軽減を目的として、車載映像中の特定領域のコントラストと解像度を変化させることで搭乗者の注視点を無意識的に制御する方式を考案した。評価実験を通じて、提案手法がアイコンなどによる明示的な視線誘導と同等の誘導効果があり,画像加工感や視線誘導感などの不快感を与える要因が低下することを確認した。 研究項目②-2:視覚・力覚の統合提示による移動感覚低減手法の開発:視覚・力覚の統合提示による移動感覚低減手法の開発:前年度までに研究項目①-1で実現した視覚情報による加速度感覚制御方式をベースに移動感覚低減手法の実現に取り組んだ。視覚情報提示によって反射的重心移動が喚起されているかを筋電センサを用いた計測実験によって提案手法の有効性を調査した。 また、提案手法による移動感覚制御の効果検証を行うために,自動走行車を用いた被験者による検証実験を実施した。実験では,視覚制御と体感制御がそれぞれどのように移動感覚制御に有効であるのか調査するために,視覚制御の有無と体感制御の有無を組み合わせた全4条件を設定し,それぞれの条件の移動感覚制御の効果を比較した。実験より、提案手法は通常走行を想定している視覚と体感の制御を行わない条件に比べて移動感覚が有意に軽減されることが示されたが,視覚のみ制御を行う条件との比較では有意差が示されなかった。しかし,移動感覚を移動距離と方向転換に分けて検証したところ,方向転換では提案手法が体感の制御が効果的である傾向が示された。体感の制御は変化が緩やかで長い加速度刺激に対して有効であることが示され,通常の自動走行ではこのような加速度刺激が多く発生するため,視覚と体感の両方の制御を組み合わせた提案手法が移動感覚を軽減する上で最も効果的であると考えられる。
|