研究課題/領域番号 |
21H03507
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤原 直哉 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00637449)
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研究分担者 |
青木 高明 香川大学, 教育学部, 准教授 (30553284)
藤嶋 翔太 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50706835)
秋山 祐樹 東京都市大学, 建築都市デザイン学部, 准教授 (60600054)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人流 / ネットワーク分析 / コミュニティ抽出 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人流の特殊性を考慮したネットワーク解析の基盤を整備してGPSなどの大規模人流データに適用するとともに、データに基づいて人流の数理モデルを提案し、外的な変化が人流ネットワークに与える影響の解析・予測を行うことである。 この目的を達成するために、2021年度は、(1)人流ネットワークが持つと考えられる特徴を定量化するための検討、(2)人流の生データを本研究のネットワーク解析に用いるための集計方法についての検討、(3)ホッジ=小平分解による人流ネットワークの分析、および、(4)本課題で分析する人流経時変化の対象の検討を行った。 (1)に関して、人流は強い周期性があり、それゆえにマルコフ性も満たされないことを改めて確認した。その特徴を捉えるために、(2)として、居住地ごとにOrigin-Destination行列を計算する方法が適切であることを大規模人流データを用いて確認した。実際に集計を行うと、個人情報保護のために秘匿が発生するが、秘匿率を抑えることのできる集計サイズの検討を行った。これらの結果により、本課題での人流ネットワーク構成手法を決定した。 (3)においては、パーソントリップデータを用いてホッジ=小平分解が人流ネットワークに対して適用できることを確認し、分解によって得られた特徴量が周辺地域と比べて特異的な値を持つ自治体を明らかにした。(4)に関しては、現在進行中の事象かつ世界的にも影響が大きい、COVID-19による人流変化を対象とすることに決定した。 人流ネットワークのホッジ=小平分解の結果は学会等で報告を行うとともに論文を執筆し投稿するとともにarXivにて公開した。特にCSIS DAYS2021においては優秀共同研究発表賞を受賞するなど、高い評価を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人流ネットワークの構築には、研究開始前の想定より時間を要した。理由として、居住地ごとにOrigin-Destination行列を作るとデータ数が少なくなり、プライバシー保護のために秘匿が多く発生することが判明したことなどが挙げられる。そのために集計単位の見積もりなどの検討が必要となり、2021年度内を予定していた集計の実施を完成させることはできなかった。しかし、いくつかの集計手法について詳細に議論を行い、検討は十分に行うことができた。また、議論の過程において、集計単位の設定は統計学的にも重要な研究課題であることが明らかになった。この点は今後研究を行いたい。このように、当初の想定外の進展があったと考えている。 パーソントリップ調査データを用いたホッジ=小平分解の研究は順調に進展し、学会等でも評価を受けることができた。この手法は、上記の居住地ごとのOrigin-Destination行列を構築することができればすぐに適用可能であると期待される。 以上のように、想定より時間を要した課題や想定外の進展が見られた課題があったが、全体としては、人流の特殊性を考慮したネットワーク解析の基盤の整備、外的な変化が人流ネットワークに与える影響の解析・予測、という、本課題の目的達成に向けて、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究を通じて、人流データからネットワークを構成する方法は確立したと考えられる。2022年度は、実データからのネットワークの構築、そして、構築したネットワークの性質の分析に力点を置き、研究を推進する。 また、人流の集計単位の設定問題を発展させる。集計単位は、通常、自治体や地域メッシュなどを単位として分析者が決定するが、これらの単位が適切かどうか、また、データサイズに応じてどの程度の大きさを設定すべきか、といった疑問は人流分析において一般的に存在する問題であり、この問題に統計学の観点から回答を与えることを試みる。これは、波及効果が期待される重要な問題である。 また、COVID-19パンデミックの前後での人流の変化を、経時変化の分析対象とすることに決定した。今般の人流の変化をネットワーク分析で特徴づけることで都市の変化を理解することは、今後を予測するために必要である。 このように、研究を進めながら、新たに明らかになった課題の解決を通じて、人流のネットワーク分析の研究を推進させていく予定である。
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