研究課題/領域番号 |
21H03524
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
清水 俊彦 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30725825)
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研究分担者 |
池本 周平 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (00588353)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 粉体 / ユニバーサルグリッパ / インハンドマニピュレーション / 応力鎖 / 深層学習 / ロボット / 真空吸着 |
研究実績の概要 |
ピックアンドプレースは対象物を把持し,所定の位置・姿勢に置くロボットの基本作業であり,多品種の対象物を扱うグリッパが学術・産業を問わず幅広く開発されている.しかし,把持することはできても所定の位置・姿勢に置くためには,グリッパに応じた計測・操作が必要となり,対象物や状況の多様性も相まって,個別の知見が収集されている状況にある.用いるロボットアーム,ランニングコスト,操作者の技能に依存せず,統一的な知見を収集するには,安価に入手でき,簡便な制御で誰でも利用でき,手中の対象物の位置・姿勢を計測・操作できるグリッパが必要となる. そこで本研究では,ユニバーサルグリッパによる対象物の位置・姿勢の計測・操作を実現する.密に充填された粉体に外力が加わると,粒子が相互作用して応力ネットワークを形成する.この応力による粉体のひずみを計測することで,対象物の位置・姿勢・接触圧を推定する.また微小粉体は空気が移動しにくい,という特性を利用し,局所的に粉体の圧力分布と充填量を制御することで,対象物の位置・姿勢・接触圧を操作する. 本年度の実績を以下に示し,進捗にて詳細を報告する.主に3つの実績を有し,粉体基礎特性の解明,グリッパ応用,ロボット応用を報告する.粉体基礎特性の解明では,混合粉体による荷重特性曲線および粉体素材による圧電特性評価を行った.グリッパ応用では,摩擦が及ぼす把持力への影響,粉体グリッパの変形が及ぼす圧電特性,超真空吸着法について実践した.最後にロボット応用について,壁面移動四脚ロボット,ユニバーサルジャミングインターフェース,吸着ドローンの開発を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粉体基礎特性について報告する.導入した自動粉体抵抗測定システムMCP-PD600を用いて,圧力に対する粉体の各種特性,すなわち応力,充填率,導電率の測定を実施した.まずはアルミ,銅,黒鉛など比較的入手性の高い素材を用いて,圧電特性を計測した.その結果,ロボットハンドで使用される低荷重領域,本研究では1Nから100Nにおいて線形の挙動を確認した.また混合粉体による圧電特性についても調査を実施した.粉体の混合比により,圧力に対する導電率を調整することが可能であることが確認された.次に混合粉体による圧電特性を調査した.従前の導電粉体を単一で用いる場合,ある荷重に達した段階で,粉体充填量に変化がなくなり,計測が困難となる問題が見られた.そこで導電粉体に非導電粉体を混ぜた混合粉体とすることで,荷重の計測範囲を拡大することが可能となった. グリッパ応用について,摩擦が及ぼす把持力への影響について調査した.膜と粉体で構成されたユニバーサルグリッパの把持力に対して,摩擦係数,接触面積,充填粉体が及ぼす影響を調査した.その結果,大きく4つの寄与係数を明らかにし,統一的なグリッパ評価指標についての検討を進めた.また粉体グリッパの変形が及ぼす圧電特性では,グリッパを伸張させる場合とそうでない場合における特性評価を行った.超真空吸着法では,従前のヤモリグリッパと真空吸着を併用した吸着機構を提案し,単位面積あたりの吸着力の向上を図った. ロボット応用として壁面移動四脚ロボットを開発した.近年の老朽化する社会インフラを解決すべく,UnitreeA1の足先に万能グリッパを装着し,壁面移動実験を実施し,その有効性を示した.またユニバーサルジャミングインタフェースを提案し,伸張時の圧電特性を用いて,形状自在なインタフェースを提案した.さらに吸着ドローンでは位置決め精度を向上した吸着機構を提案した.
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今後の研究の推進方策 |
まずはプリミティブな形状の把持対象物に関する位置・姿勢・接触圧のモデル化を行う.粉体の圧力分布と充填量を固定とし,粉体回路のモデル化に関する知見を収集する.計測器により粉体の体積抵抗特性を参照値として求め,これを用いて,以下のシステム同定で得られた体積抵抗率からグリッパ内部の圧力分布を推定する. グリッパと実験用の対象物を説明する.微小粉体は球状の導電性を持つものを用いる.膜袋は十分に薄く,側面に複数の柔軟リブを備える.柔軟リブには針状電極と,負圧と正圧の両方を生成でき,粉体の空気輸送も可能な吸排気口を持つ端子が備わっている.微小粉体は端子と膜袋に接するように充填される.把持する対象物は,透明かつ中空とし,中空部にカメラと慣性力センサ,グリッパと接触する面に圧力センサを有するものとする.対象物はグリッパの底面より膜袋に包み込まれ,内部を負圧とすることで把持され,その位置・姿勢は慣性力センサのデッドレコニングにより求める. 具体的な実験方法を述べる.入力電圧を一点に加え,観測点での応答のシステム同定を行い,その結果,得られた体積抵抗率から粉体に加わる圧力分布を参照値に基づいて推定する. この際,マルチプレクサによって多点計測を行い,粉体を網羅的に計測する.平面上に対象物を設置し,グリッパを対象物に押し付け,膜袋内部を減圧し,対象物を持ち 上げる.慣性センサにより対象物の位置・姿勢を,圧力センサにより接触圧を,四探針法により端子間に充填された粉体の体積抵抗率を測定する.その後,位置・姿勢,接触圧および粉体の圧力分布の関係を深層学習によりモデル化することで,手中の対象物の位置・姿勢および接触圧の推定を行うことが可能となる.未知の対象物への対応は,プリミティブな形状 の対象物を把持した際に得られた学習済みモデルを用いる.
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