研究課題/領域番号 |
21H03538
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井元 清哉 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10345027)
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研究分担者 |
植松 智 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (50379088)
湯上 伸弘 富士通株式会社(富士通研究所), その他部局等, 研究員 (30417183)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 腸内ウイルス叢 / 宿主寄生体感染関係 / ショットガンメタゲノム解析 / メタゲノム診断AI |
研究実績の概要 |
腸内細菌叢は非自己の成分の集合体でありながら、ヒト遺伝子と分業的協業的にあたかも「臓器」の様に振る舞うことが明らかとなってきた。更に、腸内に細菌以上に生息する共生ウイルスは、細菌に感染するバクテリオファージであり、腸内で細菌叢とエコシステムを形成するがその全貌は明らかではなかった。様々な疾患においてショットガンメタゲノム解析によって腸内細菌叢・ウイルス叢のデータを取得し、臓器機能を評価できるメタゲノム診断AIを構築する。このメタゲノム診断AIによって疾患特異的に欠損、及び活性化しているパスウェイの同定と、個々のパスウェイに関わる腸内細菌及びその細菌に特異的に感染する腸内ファージの同定を行うための情報基盤技術を構築する事を目的として研究を推進した。令和3年度においては、以下の研究成果を得た。 【疾患メタゲノム解析】クローン病、治療抵抗性偽膜性腸炎における糞便移植、パーキンソン病について腸内細菌叢と腸内ウイルス叢のショットガンメタゲノムデータを取得した。それらを我々の有する日本人健常者101名腸内細菌叢・ウイルス叢データベースと詳細な比較解析を実施した。パーキンソン病については、その病態と関連する新規のパスウェイ候補を見い出すことができ、現在国際誌に論文として投稿の最終段階に来ている。また、糞便移植のメカニズムについては、腸内細菌叢、ウイルス叢の統合的な解析によって世界で初めてその謎を解明する論文を米国消化器学会の機関誌である Gastroenterology に出版し、表紙にも選ばれた。 【メタゲノム診断AIの構築】取得済み日本人健常者101名のショットガンメタゲノムデータをもとに、健常者における腸内微生物叢の臓器機能を評価するメタゲノム診断AIを富士通研究所の有する人工知能Zinraiを基盤として構築を進めており、パーキンソン病において検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたメタゲノムデータの取得を行い、新たなデータ解析技術の開発、およびデータ解析によって疾患に関連するパスウェイの同定にまで至った。また、これまで分かっていなかった糞便移植のメカニズムを世界に先駆け解明できた。メタゲノム診断AIの構築もパーキンソン病のメタゲノムデータを用いて計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに進んでおり、特に問題点はない。今後も疾患群のメタゲノムデータのサンプル数を増やし、正常検体のメタゲノムデータを活用することでメタゲノムの臓器機能の評価から診断を可能とするAIの構築、およびそのAIを用いた腸内微生物叢の基礎研究を推進していく。
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