研究課題/領域番号 |
21H03543
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
荒牧 英治 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70401073)
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研究分担者 |
工藤 紀子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 博士研究員 (30751151)
高田 正泰 京都大学, 医学研究科, 准教授 (50452363)
川口 展子 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (60771540)
山敷 宣代 関西医科大学, 医学部, 講師 (90420215)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 医療言語処理 / 医療情報 / 自然言語処理 |
研究実績の概要 |
本研究は,患者と医師を繋ぐ自然言語処理基盤を構築している.現在,医用画像AIやゲノム診断AIなど医療AIの活用に注目が集まっているが,市中病院の診療ブースなどの日常の臨床現場にて医療AIが用いられることはなく,十分な普及には至っていない.この遅れの原因は,時として非文法的かつ断片化した患者の言葉の処理(申請者らは医療言語処理と呼んでいる)の研究が十分に進んでいないためだと考えられる.そこで,本研究では,肝疾患患者の禁酒指導といった具体的な課題で,患者テキストの表記ゆれ吸収や事実性判定を実現する医療言語処理基盤を構築し,臨床に貢献できる,つまり,診療ブースで利用できるアプリケーションを構築している.具体的には次の3項目からなる. 【研究項目1:医療言語処理基盤の構築】 患者テキストに対して,時間表現,部位表現,症状表現,精神的症状(不安や悩み)を特定する. 時間表現,部位表現,症状表現については,系列ラベリング技術によって抽出を行い,表記ゆれ 吸収の処置を経て,国際標準のターミノロジーに紐付ける. 【研究項目2:乳がんでの実証実験】 乳がん治療中の患者から副作用を抽出する. 【研究項目3:肝疾患での実証実験】 アルコール依存症の患者については,禁酒コントロールを行う. 本年度は,患者情報を要約して医療者へ繋ぐことができる自然言語処理を構築し,病院内サーバに設置した.そこで医療者の負担を増やさずに医療の質を向上させることができるかを実証する実験をデザインし,倫理申請を行なっている.また,開発したアプリケーション「症状アプリ」として,誰でも利用可能なようAppstoreにて公開を予定している.これらの成果を含めて,今後,論文を執筆する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は次の2つの項目からなる. (1)医療言語処理基盤の構築:患者テキ ストに対して,時間表現,部位表現, 症状表現,精神的症状(不安や悩み) を自動抽出し,国際標準のターミノ ロジーに紐付けるシステムを開発す る. (2)臨床研究による検証:30人規模で の臨床研究を行う.患者から抽出し た情報を医師端末へ送信し,結果を 参照しつつ診療を行う.評価は,治療 が奏功したかどうかを調査する.実 験デザインは,観察研究の形をとる. (1)については開発を完了でき,実験の準備は整っている.(2)について,一部実験を開始しているが,入力が少なく,アプリケーションのさらなる改良など調整している. これらの状況を踏まえて,概ね順調な進展だと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
関西医科大学での実験,及び,えられたデータを用いた論文の執筆が次の課題である. また,より広くは,上記を通じ,自然言処理研究を臨床に導入することで,患者の脱落,アプリ操作の難易度,臨床での使用の簡便さな,多くの側面で重要な知見が得られると考えている.
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