研究課題/領域番号 |
21H03549
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
白石 友一 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (70516880)
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研究分担者 |
飯田 直子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40360557)
吉見 昭秀 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (80609016)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スプライシング / ゲノム変異 / 大規模データ解析 / クラウド |
研究実績の概要 |
我々は昨年度までにintron retentionを引き起こすゲノム変異(Intron Retention Associated Variant, IRAV)をトランスクリプトームシークエンスデータのみを用いて探索する手法(IRAVNet, https://github.com/friend1ws/iravnet)の開発し、さらにIRAVNetをSequence Read Archiveの20万件以上のデータに適用して、数万のIRAVのカタログを得ていた。本年度は、手法の評価、病的変異の検出性能など様々な観点からの評価結果をまとめた。また検出したIRAVの全体像をまとめたポータルサイトの開発を行なった(https://iravdb.io/)。これらの一連の成果を論文としてまとめ(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.10.05.463278v1)、国際学術誌に投稿し、現在改訂中である。 また、スプライシングモチーフを生成させ、スプライシング異常を引き起こすタイプのゲノム変異をトランスクリプトームデータから探索するワークフロー(juncmut)の整備を行い、主として遺伝学研究所のスーパーコンピューターを用いて、Sequence Read Archiveの30万件以上のデータに対して適用し、当該変異のカタログを獲得した。現在、juncmutを他のアプローチと比較して性能検証を行う、解析結果に対して各種アノテーションを付与して解釈を行うなどの一連のプログラムの整備しつつ、結果のまとめを行なっている。特に、疾患関連の遺伝子に対して、多くの変異の検出ができたこと、またdeep intronにおける変異とAlu配列の関連など生物学的に興味深い現象を見出すことができたことなどが成果として挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り、IRAVNetをSequence Read Archiveの20万件以上のデータに対して適用した結果をまとめて、投稿することができた。また、スプライシングモチーフを生成させることによりスプライシング異常を引き起こすタイプのゲノム変異を網羅的に探索する手法についても順調に整備を行い、30万件のトランスクリプトームデータに対して適用、変異のカタログ化を行い、ある程度生物学的に意義の深い結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、スプライシングモチーフ生成によりスプライシング異常を引き起こすゲノム変異の網羅的な探索結果について、結果をまとめて論文を執筆し投稿することを目指す。この過程で、スプライシングアッセイなどの生物実験を通じて、導入したゲノム変異がスプライシング異常を引き起こすかの確認を一部の変異に対して実行する。また、近年核酸医薬によりスプライシング変異を調整する試みが脚光を浴びているが、今回検出した変異に対してスプライシング制御型アンチセンス核酸配列を投入することで、異常なスプライシングの正常化を誘発できるかの検証を行い、将来的な創薬研究への発展を目指す。 さらに、Alu配列をはじめとする可動遺伝因子挿入によりスプライシング異常を引き起こすタイプのゲノム変異を網羅的に探索するプログラムの開発にも着手を行う。
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