研究課題
本研究では、疾患関連変異をタンパク質の立体構造上でのクラスタ(3D変異クラスタ)という単位でとらえ、3D変異クラスタを基点としたタンパク質の未発見の機能部位探索法を提案するものである。昨年度までに、1261個の構造既知のヒトのタンパク質構造に対し、網羅的な3D変異クラスタの探索を行い、約350個の未知の機能部位候補を見出した。本年度は、高精度のタンパク質構造予測法であるAlphaFold2を用い、構造未知のタンパク質も解析対象とすることで、未知の機能部位候補のさらなる探索を行った。まず、19335個のヒトのタンパク質の予測構造に対し、疾患関連変異のタンパク質構造上の集積を調べたところ、Autosomal dominantな疾患関連変異がクラスタ化する傾向があり、また、機能喪失変異に不寛容なタンパク質においても疾患関連変異がクラスタを形成しやすい傾向があることがわかった。そこで、Autosomal dominantな疾患関連変異を持つ、または、機能喪失変異に不寛容なタンパク質において、構造が解かれている割合が20%以下のものに焦点をあて、AlphaFold2の予測構造上において、3D変異クラスタの同定を行い、未知の機能部位候補の探索を行った。その結果、197個のタンパク質に対し、579個の3D変異クラスタを同定することができた。このうち、246個に関しては、結合ポケット探索で見つかったポケット近辺に位置しており、新しい機能部位の候補となり得る。残りの333個に関してもクリプティックサイトやアロステリック制御部位の可能性がある。また、共溶媒MD法の実験条件も固めることができたので、これらだけでなく、機知構造から得られた未知の機能部位候補も対象に、AI技術によるクリプティックサイト予測や共溶媒MD法を用いてさらなる解析を行い、信頼性の高い機能部位候補を絞り込む予定である。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、AlphaFold2を活用したさらなる3D変異クラスタの探索を完了させることができ、新規の機能部位候補の拡充ができた。さらに、共溶媒MD法の実験条件も固めることができたため。
構造既知のヒトのタンパク質構造およびAlphaFold2の予測構造より得られた新規機能部位候補は、クリプティックサイトやアロステリック制御部位である可能性があるため、AI技術によるクリプティックサイト予測や共溶媒MD法を用いた解析を行い、より有力な新規機能部位候補の絞り込みを行う。また、変異のアロステリック効果をとらえるため、幾何学的特徴に注目した構造変化予測法も活用する。
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eLife
巻: 12 ページ: RP90274
10.7554/eLife.90274
Cell Rep.
巻: 42(12) ページ: 113567
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