研究課題/領域番号 |
21H03563
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
竹本 拓治 福井大学, 地域創生推進本部, 教授 (30542104)
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研究分担者 |
中西 孝平 鹿児島国際大学, 経済学部, 准教授 (00804212)
川上 祥代 福井大学, 地域創生推進本部, 特命助教 (20817340)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナッジ / アントレプレナーシップ / 金融リテラシー / 構造方程式モデリング / ゲーミフィケーション / 経営戦略 / テキストマイニング |
研究実績の概要 |
本研究では、ゲーミフィケーションとナッジ理論の関係性を明らかにし、ヒトの行動変容のメカニズムを因子分析等で解明することで、アントレプレナーシップや金融経済リテラシーの獲得等の教育、経営戦略や人事評価制度などのビジネスへの応用、社会変革につながる活動などへの貢献を目指している。 研究代表者チームは、国内にてデータ収集を行うとともに、データ対象者の消費行動パターンの分析を行った。その結果をもとに、ナッジ理論のフレームワークである“The MINDSPACE”の視点から、複数の行動改善にかかる提案を検討した。また、数多く存在するデジタルゲームについての類型化と、その中でもヒトの行動変容に影響を与える型について整理し、ゲーミフィケーションの貢献要素についてデータ収集を行った。その結果、すべてのデジタルゲームが同じように評価できるわけではないこと、および「デジタルゲームは人に悪影響を与える」という一方的な誤解を解くこと可能性を見出した。 研究分担者は、経営者および起業支援者、社会起業者等に対し、インタビュー法により起業行動(行動変容)に影響を及ぼす因子の探索を行った。またゲームの特性に焦点をあて、それら特性からナッジ要素についての考察を行うことを目的とし、テキストマイニング法による分析(分析対象のデータ概要を示す「多次元尺度構成法」と、出現パターンの関係性を示す「共起ネットワーク」)の結果より、ゲームの特性を確認し、関係するナッジ要素を把握した。研究協力者である海外研究者は、研究代表者と共にゲーミフィケーションに内在するヒトに行動変容を促す要素の定量化を行った。 以上により、定性面、定量面の双方から、ゲーミフィケーションが人の行動変容に影響を及ぼす可能性のある因子の絞り込みを行うことができたとともに、パス解析(構造方程式モデリング)によるモデル化の試行を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
海外渡航が制限されたため、当初予定していた国際学会発表は延期になったものの、遠隔会議等を利用し、国内外の研究分担者、研究協力者と共に、ゲーミフィケーションの要素に関するパス解析を実現でき、類型化による因子の関係性を明らかにし、ゲームの貢献性の分析に関する論文発表が実現できたことによる。 またビジネスへの応用について、実データの収集が実現できたとともに、ゲーミフィケーションとナッジを組み合わせた新たな方向性を見出したことにより、当初の計画以上の成果が期待できる可能性が出てきたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ナッジ理論を政策に採り入れたイギリスをはじめとする諸外国、および日本国内でも見られ始めた成果事例の分析、特に税金問題、交通事故対策に代表される市民教育、社会変革の成功モデル等)から、行動変容に効果と影響を与える要因を特定する。要因を特定したうえで、それらの要因を内包するツールとしてデジタルゲームや、アナログゲームに内在する潜在的な因子を明らかにするためのデータ収集を行い、定量と定性の双方から研究を進める。 2年目は既存事例のナッジ効果の計測と評価を交え、応用可能な事例提案までを想定している。1年目のデータ収集の結果、ナッジによりヒトは目的行動(機能行動)から付加行動(自由行動)に移る可能性が示唆された。当該データの定量分析ののちに実施したワークショップでは、拡張現実(AR:Augmented Reality)を利用することにより、高い効果を生むのではないかと想定された。このことから本年度のナッジの効果計測として、行動デザインプロセス(Behavior Design Process)にてナッジを設計すること、ナッジ効果を有効化するためMINDSPACEモデルを簡略化したEASTで効果を予測すること、ナッジの評価としてRE-AIMフレームワークを用いることを考えている。 1年目に引き続き、研究代表者と研究分担者、研究協力者の間で共有するための研究会を実施するとともに、解析に必要な顕在変数の設定と被験者データ収集の協議を行う。それらの結果を集約し、潜在変数となりうる候補の抽出とパス図の仮説検証プロセスを開始する。3年目に想定している、構造方程式モデリングによる定量化のためのデータ収集(ゲーミフィケーションによる被験者のナッジ効果の計測)のため、先行地域におけるモデルケースを調査し、行動変容の解明につなげる。
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