研究課題/領域番号 |
21H03563
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
竹本 拓治 福井大学, 地域創生推進本部, 教授 (30542104)
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研究分担者 |
中西 孝平 鹿児島国際大学, 経済学部, 准教授 (00804212)
川上 祥代 福井大学, 産学官連携本部, 研究員 (20817340)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナッジ / アントレプレナーシップ / 金融リテラシー / 構造方程式モデリング / ゲーミフィケーション |
研究実績の概要 |
本研究では、ナッジ理論を政策に採り入れたイギリスをはじめとする諸外国、および日本国内でも見られ始めた成果事例の分析から、行動変容に効果と影響を与える要因を特定する。要因を特定したうえで、それらの要因を内包するツールとしてデジタルゲームや、アナログゲームに内在する因子を明らかにし、構造方程式モデリングによるパス解析等により、行動変容を論理的に明示化し、学習支援システム等の高度化や市民教育、社会変革の成功に貢献することを目的としている。 本年度は、海外事例調査、国内事例のデータ収集とその構造方程式モデリング結果による実験の提案および実証実験までを行うことができた。 海外調査事例では、英国およびタイにおける当該研究のサーベイを行った。英語文献のみならず、タイ語文献についてはタイの大学研究者の協力により実施できた。事例調査では、都市部における自動販売施設、政治面でのライブ配信利用、交通情報アプリ、フランチャイズ店舗、国による販売促進事例を確認できた。また日本との比較によるタイのコンシューマーファイアンスの状況についても、研究の糸口をつかんだ。 国内事例については、1年目のデータ収集の結果から、目的行動(機能行動)から付加行動(自由行動)に移る可能性が示唆されたため、福井県内のある地点においてナッジに関する仕掛けを設置し、実証実験を行った。事前事後の2時点による計測から、有意差を見たところ、「平日と休日にて有意差の有無が異なる」「対象の属性別においても効果が異なる」といった可能性を見出している。 その他、ゲーミフィケーションが人の行動に与える影響に関する調査では、特定のデジタルゲームソフトに対する行動変容の該当の有無の実態把握を行った。また起業に至る行動変容プロセスでは、インタビュー調査から起業意識を探った結果、起業無関心層であってもナッジの組み込みによる効果の可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年目となる本年度は、計画段階では既存事例のナッジ効果の計測と評価を交え、応用可能な事例提案までを想定していたが、提案の一部を実証実験レベルまで行うことができたことから、当初計画を上回る形で進めることができた。 具体的には、共分散構造分析による因果関係を基にした実験の提案およびその結果のデータ収集までを行うことができたため、次年度はその分析と追加調査を中心とし、研究をまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗では、ナッジによりヒトは目的行動(機能行動)から付加行動(自由行動)に移る可能性と、実証実験により対象や条件による効果の有無に差が出る可能性を見出している。最終年度として、実証実験の補助調査と、研究成果の発表を中心に行う予定である。 ナッジに関するゲーミフィケーション効果に関しては、これまでに収集した国内外の先行研究をレビューの上、ナッジ仕掛けに関する実証実験結果を分析し、論文にまとめる。そのうえで、これまでに得られた人の行動変容のデータをもとに、自治体等のナッジ政策について、仕掛けの構築段階からエビデンスに基づく実験計画が組み立てるための「政策のための行動デザインプロセス」を構築する。この実現のためには、各自治体との情報共有が必要であり、地域を実験の場とした機会も合わせて設定し、モデルケースとする計画である。 以上の研究を効果的に遂行するため、以下の3つの追加調査を3年目に行う予定である。①2年目に海外都市部の政策応用事例を調査したが、加えて地方部における応用事例を調査することで、国内自治体等の政策に役立つ行動デザインプロセスを明らかにできる可能性がある。②起業教育、言語教育といった、人のマインドに訴えることで効果を有すると想定される教育領域についても、研究分担者、研究協力者とともに調査を行う。③ゲーミフィケーションに関する社会の理解がなくして、本研究の社会実装は難しい。そのため同産業を含むゲームという概念への人々の捉え方に関し考察を行う。 最終年度においても、研究代表者と研究分担者の間で共有するための研究会を実施し、研究代表者と分担者における成果の共有と発表に向けて準備を進める。本研究の次の研究としては、ゲーミフィケーションの要素をナッジ理論と組み合わせることで、より効果的な行動変容を実現する可能性を探求する予定である。
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