研究課題/領域番号 |
21H03578
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
中嶋 秀 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (10432858)
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研究分担者 |
茅根 創 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60192548)
森岡 和大 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70794056)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | pHセンサー / イオン感応性電界効果トランジスタ / ISFET / 海洋酸性化 |
研究実績の概要 |
(1)拡張ゲート型ISFETセンサーの作製 ダイシングソーを用いてP型シリコンウェハを5mm角にカットし,電子サイクロトロン共鳴スパッタ装置(ECR)を用いて,シリコンウェハの表面に酸化タンタル(Ta2O5)の薄膜(イオン感応膜)を形成した。次に,フレキシブルプリント回路基板の先端に,銀/塩化銀ペーストを用いて,イオン感応膜を形成したシリコンウェハを接続し,シリコンウェハのイオン感応部以外をエポキシ樹脂でモールドした。このフレキシブルプリント回路基板に電界効果トランジスタ(FET)を取り付け,拡張ゲート型ISFETセンサーを作製した。
(2)拡張ゲート型ISFETセンサーの性能評価 上記で開発した拡張ゲート型ISFETセンサー,ゲート電位検出部(Ag/AgCl),プリアンプ,データロガー,電源およびコンピュータなどから構成されるpH計測システムを構築し,pH標準液を用いて開発したISFETセンサーの性能評価を行った。すなわち,開発したISFETセンサーのイオン感応部とゲート電位検出部を一定温度の3種類のpH標準液(pH 4.01, 6.86, 9.18)に順次浸漬し,ゲート電圧を測定した。その結果,開発したISFETセンサーはpHの変化に対して瞬時に応答し,pHが高くなるとゲート電圧の値が増加することがわかった。そこで,ゲート電圧値をpHに対してプロットした検量線を作成したところ,相関係数0.999の良好な直線性を示す検量線が得られた。このとき,5回の繰り返し測定における相対標準偏差(RSD)は0.35~0.71%,10秒間のノイズの標準偏差の3倍と定義したセンサーのpH分解能は0.00022 pHと見積もられ,開発したISFETセンサーは市販のガラス電極を用いるpHセンサーと同等の性能を有することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)拡張ゲート型ISFETセンサーの作製 研究計画書に記載した方法で拡張ゲート型ISFETセンサーを作製することができたため。
(2)拡張ゲート型ISFETセンサーの性能評価 イオン感応膜に酸化タンタルを用い,膜厚を最適化することにより,当初の分解能(精度)の目標値を達成することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)センサーのアレイ化 複数の拡張ゲート電極(イオン感応部)とゲート電位検出部を一直線上に配列したISFET センサーを作製する。pH標準液と標準海水(CRM)を用いて,個々のISFETセンサーが溶液のpH変化に対して精確に応答することを調べる。これにより,各センサーのpH分解能が0.0005pH以内であること確認する。また,本研究では最終的に海中に装置を沈めてpH測定を行うため,バッテリーでの駆動が必要不可欠である。そこで,ISFET制御用電子回路とデータロガーにバッテリーを接続し,固定電源無しで1週間程度pH 計測が可能であることを示す。
(2)模擬環境でのpH計測 実際に海中で実験を行う前に,装置を水没させても計測できるかどうかや,砂地に埋め込んだセンサーの物理的・化学的耐久性も十分に評価する必要がある。そこで,実際の海砂と海水を用いて1mほどの大きさの水槽内に海中の模擬環境を構築し,開発したISFETセンサーの性能評価を行う。そのために,まず,耐水性の密閉容器内に電子回路やバッテリーを入れ,イオン感応部とゲート電位検出部が外部に露出したシステムを構築する。次に,このシステムを上記水槽内の海砂に埋め込み,1週間程度連続で 海水のpH 計測が可能であることを実証する。
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