研究課題/領域番号 |
21H03582
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
庭野 匡思 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (10515026)
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研究分担者 |
林 修吾 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (20354441)
橋本 明弘 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (20462525)
青木 輝夫 国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 特任教授 (30354492)
大島 長 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (50590064)
藤田 耕史 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80303593)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | グリーンランド氷床 / 雪氷融解 / 領域気候モデル / NHM-SMAP / 再解析データ / 地球システムモデル / 北極温暖化増幅 / 気象庁 |
研究実績の概要 |
・本課題で開発している領域気候モデルNHM-SMAPの駆動データとして、これまで用いていた気象庁のJRA55に加えてヨーロッパ中期予報センターによる最新の再解析データERA5を用い、計算結果に対する再解析データの違いの影響を調査する試みを開始した。また、気象庁の最新の再解析データJRA3Qを用いてモデルを駆動する環境を整備した。NHM-SMAPをベースにして開発された日本域領域大気―積雪モデルLFM-SMAP(Niwano et al., 2022)が2022年10月に気象庁において現業化され、我が国の雪に起因する災害を予測するために活用されることとなった。予測情報は、気象庁HPの「今後の雪」コーナー(https://www.jma.go.jp/bosai/snow/)で閲覧可能である。 ・冬季グリーンランド北西部で漁業被害につながる海氷流出を引き起こす強風の発生条件をNHM-SMAPの大気パートNHMなどを用いて統計的に調べた結果、総観規模の気圧パターンを参照することで強風の発生リスクを評価できることが分かった。 ・グリーンランド氷床に存在する裸氷の暗色化を促進する可能性のあるクリオコナイトホールの発達と崩壊をNHM-SMAPにおいて表現することを目指して数値モデルの開発をおこなった。そのモデル開発においては、裸氷中を透過する日射の広波長帯域透過率モデルのパラメタリゼーション手法を考案し、モデルに実装した。グリーンランド氷床の裸氷の経年変動を把握してNHM-SMAPと比較するために、表面のアルベド変動を衛星リモートセンシングにより調べた。 ・本課題における領域気候モデルによる研究対象期間(1980年以降)よりも長期の北極温暖化増幅を調べるために、気象研究所地球システムモデル(MRI-ESM2)による歴史実験計算と北極域でのアイスコア観測との比較を行い、モデルの再現性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題で開発を推進している領域気候モデルNHM-SMAPが気象庁現業業務で採用された(社会実装)。この点は当初の研究計画で目指していたことではなく、想定以上の成果である。NHM-SMAPを複数の再解析データで駆動することも実現した。その他、NHM-SMAPの大気パート(NHM)を用いて、グリーンランド北西部での雲・降水系の機構解明を進めることが出来た。グリーンランド氷床表面物理量の衛星リモートセンシングは予定通り進捗している。また、気象研究所地球システムモデル(MRI-ESM2)による計算を北極域で取得されたアイスコア観測により検証し、モデルの再現性が従来よりも向上していることを示すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
ERA5によって領域気候モデルNHM-SMAPを駆動し、グリーンランド域における長期気候計算を行う。その結果を、他の再解析データを用いてNHM-SMAPを駆動した場合と比較して、結果がどの程度変わるのか、について明らかにする。NHM-SMAPによって計算された氷床上雲分布・雲特性の再現性の検証を引き続き進める他、今年度新たに開発したクリオコナイトホールモデルをNHM-SMAPと組み合わせて、グリーンランド氷床の裸氷に存在するクリオコナイトホールが氷床表面質量収支に与える影響を調べる。グリーンランド域における地球システムモデル計算結果と領域気候モデル計算結果の比較も引き続き実施する。最後に、本課題全体の取りまとめを行う。
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