研究課題/領域番号 |
21H03584
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研究機関 | 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター |
研究代表者 |
山口 保彦 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 研究員 (50726221)
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研究分担者 |
木庭 啓介 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (90311745)
岡崎 友輔 京都大学, 化学研究所, 助教 (40823745)
中野 伸一 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (50270723)
布施 泰朗 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (90303932)
早川 和秀 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 部門長 (80291178)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 溶存有機物 / 窒素循環 / アミノ酸 / 細菌 / 窒素同位体 |
研究実績の概要 |
2021年度は、以下の3項目について、下記の通り、研究を進めた。 (1)細菌由来DONの時空間分布:琵琶湖の天然湖水中の溶存有機物(DOM)について、調査船「びわかぜ」を用いて、月1回程度の定点深度別試料(北湖17B地点の水深5m,60m)を採取した。6,8,10月については、沖帯~沿岸域のトランセクト調査と、流入河川(姉川)での採水を実施した。DOC・DON濃度、DOM三次元蛍光等の分析を進めた。LC-FLDを用いたD-アミノ酸バイオマーカーの分析法について、迅速化等の改良を検討した。D-アミノ酸濃度への非生物的ラセミ化効果を補正して環境有機物中の細菌由来有機物寄与度を推定する手法を、新たに考案した。限外濾過、固相抽出等を用いたDOM分子量分画を実施した。FT-ICR-MS等の分析条件・解析法を検討し、濃縮したDOM試料を分析に供した。熱分解GC-MSでペプチドグリカン等の標準物質の分析を進めた。 (2)細菌由来DONの生成プロセス:D-アミノ酸のトレーサーレベル15N/14N比迅速分析法の開発に向けて、実験室の前処理環境の整備を進めた。アミノ酸窒素同位体比の天然存在比分析法の開発に向けては、LC-CADを用いたアミノ酸精製法の立上げを進めた。植物プランクトンと細菌の共存する系のマイクロコスム実験に向けて、植プラを用いた予備培養実験を実施した。琵琶湖湖水細菌にグルコースを基質として添加するマイクロコスム実験を開始した。 (3)細菌由来DONの分解プロセス:琵琶湖の表層湖水有機物の長期分解実験について、濾過試料を採取し、DOC・DON濃度、DOM三次元蛍光、細菌群集組成(16Sメタバーコーディング)等の分析を進めた。発現遺伝子解析に向けては、重要なDON分解関連遺伝子の絞り込みを進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載の通り、初年度である2021年度には、天然湖水、湖水細菌マイクロコスム培養実験、表層湖水有機物分解実験など、仮説の実証に向けた重要な試料の採取が、順調に進行した。各種の分析法・解析法の開発・検討も、それぞれ進行している。新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響により、不測の事態(共同利用施設の利用停止、研究代表者の保健所への一時出向等)は生じ、研究の進展に少なからず影響は受けたものの、全体としては現段階では「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、以下の3項目について研究を進める。4月より琵環研において、科研費雇用で博士研究員に着任いただいたので、特にD-アミノ酸分析の部分で、研究をさらに強力に推進していただく。 (1)細菌由来DONの時空間分布:琵琶湖の天然湖水中の溶存有機物(DOM)について、調査船「びわかぜ」を用いた採取を継続する。LC-FLDを用いたD-アミノ酸バイオマーカーの分析法の改良を継続するとともに、採取した湖水DOM試料の分析を進める。DOMの分子量分画や各種化学組成分析を進める。 (2)細菌由来DONの生成プロセス:D-アミノ酸のトレーサーレベル15N/14N比迅速分析法の開発を進める。植物プランクトンと細菌の共存する系のマイクロコスム実験を実施する。湖水細菌のみのマイクロコスム実験の試料採取を継続し、各種分析を進める。 (3)細菌由来DONの分解プロセス:有機物長期分解実験の試料について、D-アミノ酸バイオマーカー分析を進めるとともに、細菌群集組成等の解析も継続する。琵琶湖湖水の天然細菌メタトランスクリプトームの月別変動データを解析し、DON分解関連遺伝子の発現の変動を明らかにする。
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