研究課題
本研究では、外洋の亜表層において微量栄養素である鉄、銅、亜鉛の動態と光環境が、植物プランクトンからの亜硝酸塩の細胞外放出や、微生物群集による硝化作用に複合的な影響を及ぼし、亜硝酸塩極大層の形成を始めとする亜表層の窒素循環を制御しているとの仮説の検証に取り組んだ。そのため、西部北太平洋(東経150~155度)の北緯20、30、41度において、栄養塩、微量金属、植物プランクトン、微生物群集の亜表層付近における詳細な鉛直分布を調べた。その結果、亜硝酸塩極大層の深度がクロロフィル極大層よりも15-20mほど深くなっていることが明らかになり、これらの海域では微生物群集によるアンモニア酸化と亜硝酸酸化の不均衡が亜硝酸塩蓄積の主な要因になっていると考えられた。但し、何れの測点においても有光層下部における溶存鉄濃度が0.3 nM以下の低濃度であったため、鉄欠乏ストレスを受けた植物プランクトンからの亜硝酸塩の放出もある程度寄与している可能性がある。また、亜硝酸塩極大層は、高緯度の測点で深度が浅く、かつ濃度が高くなっていたのに対して、銅と亜鉛の溶存濃度も高緯度に向かうにつれて高くなる傾向を示した。さらに、海洋における硝化速度と硝化微生物の現存量に関する全球スケールのデータベースを構築して解析を行ったところ、硝化の光制限が全球で一様ではないことが示された。これらの結果から、西部北太平洋の亜表層において植物プランクトンと微生物群集が駆動する窒素循環に関して、鉄などの微量栄養素と光環境が重要な役割を果たしていることが強く示唆された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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