研究課題/領域番号 |
21H03604
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
五十嵐 勝秀 星薬科大学, 薬学部, 教授 (30342885)
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研究分担者 |
大塚 まき 星薬科大学, 薬学部, 助教 (40734372)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / 毒性評価 / DNAメチル化 / 化学物質 / レポーターアッセイ |
研究実績の概要 |
エピジェネティクス研究が長足の進歩を遂げ、生命制御の基盤システムとしての重要性が日々明らかになっているにも関わらず、化学物質影響のゲノム記憶であるエピジェネティック毒性のリスク対応は進んでいない。申請者は、毒性試験とエピジェネティック毒性検出手法が相容れず、影響が見逃されている可能性を指摘し、観察および定量測定が容易なレポーターによるエピジェネティック毒性検出手法を考案し、それが作動することをこれまでの研究によって確認してきた。一方その過程で、本手法が毒性研究で広く活用されるためには、感度の向上、アッセイの簡便化等、解決が容易ではない複数の課題を克服する必要があることを認識した。 本研究では、それらの課題への有効な対応策を提示し、本手法を、通常の毒性試験のオプションとして容易に実施可能でありながら、エピジェネティック毒性作用の確定判定が可能な「統合型個体レベルエピジェネティック毒性評価システム」として完成させることを目的としている。 今年度は本手法を改善するための課題として、検出感度向上に取り組んだ。特に、基本レベルのメチル化上昇による感度向上を検討するために、レポーターベクターをメチラーゼによりあらかじめメチル化処理し、細胞に導入し検討した。これまでのところ、メチラーゼ活性が想定より低く、基準となるメチル化レベルを上昇させられていないこともあり、十分な感度向上を達成できていないが、本法が有効であることを示すデータは得られている。また、アッセイ効率を高めるために、細胞生存データを蛍光により得ることの検討も始めている。そのために膜透過性蛍光ペプチドを細胞に添加し、それ自体が細胞増殖に影響を与えないことを確認した。今後、発光と蛍光を比較し、細胞生存データ取得の効率化を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は課題を申請した際の計画に則って進めており、予備検討も含めデータが問題なく得られている。従って、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き、本手法の感度向上に向けた研究を継続する。今年度は、a)基本レベルのメチル化上昇による検出感度向上、b)複数プロモーター の同一細胞への組み込み、c)蛍光による細胞生存データの取得、を実施し、結論を得る。a)について、これまでの検討により、Agouti-IAP, DazIともに基本レベルのDNAメチル化が低いことが分かっている。そこで、基本レベルのメチル化を上昇させることにより、感度向上を図る。予備検討により、実際にメチラーゼ処理によって細胞導入後のDNAメチル化率がメチラーゼ濃度依存的に上昇すること、Nluc活性が逆相関的に低下することを示す結果を得ている。この結果を踏まえ、基本レベルのメチル化をどの程度上げるのが感度向上に適しているか、脱メチル化剤5-azaCを陽性物質として用い検討する。b)について、これまで、Nlucを定量用ルシフェラーゼとして用いてきたが、ルシフェラーゼには他にも基質が異なるLuc2、Rlucがある。また、Nlucは細胞外に分泌させるタイプのsecNlucもある。申請者は、これらを組み合わせ、secNlucでまず細胞外のルシフェラーゼ活性を測り、細胞を溶解し 、Luc2を測り、活性を停止させた後にRlucを測ることで、3種類のルシフェラーゼレポーターを同一細胞で測定するシステムを考案している。プロモーターとしては、低レベルのメチル化のGAPDH、低~中レベルのメチル化のAgouti-IAP、高レベルのメチル化のDazIを用いる。これらの各種ベクターを構築し、各ルシフェラーゼ活性の測定が可能か検討する。c)について、細胞生存データを発光検出による方法から、膜透過性蛍光ペプチド(GF-AFC)によって測定する方法に切り替える。これにより、アッセイ時のプレート数を半減することができ、効率化を図る。
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