揮発性有機塩素化合物CVOCは過去多量に用いられ、土壌汚染が多数顕在化している。汚染調査せず、高濃度で放置すると粘性土奥部まで浸潤して浄化困難となるため、粘性土に着目した汚染の評価技術、効率的浄化技術が求められる。本研究では、CVOCの粘性土への浸潤の経時変化を測定・解析する。また、粘性土からの効率的な浄化技術の開発のために、高温加熱等による粘性土中からの溶出促進効果を測定・解析した。更に実汚染現場での加温・熱対流浄化技術の適用を検討し、汚染が拡散せずリバウンド問題もない「本質安全な浄化終了判定手法」を検討・提案した。令和5年度の研究内容及び成果の概要を以下に記す。 ①液状揮発性有機塩素化合物存在時の粘性土への浸潤挙動の測定・解析については、汚染の放置や加温中に液状汚染物質が粘性土にどの程度浸潤するか解析できる粘性土壌中の拡散予測計算シート(拡散挙動、吸脱着挙動等)を作成できた。加温浄化時の予測計算により、不透水層が薄く1m程度の場合には均一に60℃程度で加温してしまうと第二帯水層まで汚染を拡げる懸念があることが確認できた。 ②-1 粘性土からの定温時・熱対流発生時の溶出促進効果の測定・解析では、15℃~60℃で3種類の粘性土からの溶出挙動を測定し、予測計算のための拡散係数等のパラメータを把握できた。 ②-2 粘性土中に拡散以外の溶出促進について、エタノール水溶液においては加温50℃と合わせることにより、溶出促進効果を約2倍まで高められることが確認できた。ただし、エタノール濃度の増加は、溶解度増加による溶出促進とともに粘度増大による溶出阻害も見られたが、テトラクロロエチレンやトリクロロエチレンでは溶出促進効果が上回ることが分かった。更に超音波を用いた溶出促進実験を行ったが、28~100kHzでは十分な溶出促進効果が確認できないことが分かった。
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