研究課題/領域番号 |
21H03632
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷川 浩 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90253335)
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研究分担者 |
太田 明雄 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (10324104)
澤井 光 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 助教 (30784962)
眞塩 麻彩実 金沢大学, 物質化学系, 助教 (50789485)
RAHMAN Ismail 福島大学, 環境放射能研究所, 准教授 (60773067)
水谷 聡 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80283654)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 廃棄物 / フッ素 / 環境改善技術 / キレート剤 / 界面活性剤 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続いて、フッ素含有廃棄物の実試料に対して有効な化学洗浄剤の開発に取り組んだ。フッ素の抽出洗浄を促進する新規化学薬剤の主剤としてキレート剤をスクリーニングしてフッ素抽出能力が高い薬剤を探索した。また、キレート洗浄の補助薬剤として、各種官能基との反応性の高いチオール基を有するアミノ酸型界面活性剤の合成を行い、還元能力並びにアルデヒド化合物との吸着性能に関する機能性の評価を行った。複数の実廃棄物試料に適用して、フッ素の抽出除去に最適な化学薬剤のベストミックスを明らかにした。 次に、上記の化学薬剤によるフッ素除染メカニズムについて、フッ素の化学形態を解析する先端計測化学の手法を用いて解析した。化学洗浄プロセスの各段階におけるフッ素汚染廃棄物を準備し、従来法との比較のために公定法でフッ素濃度を定量する含有量試験および溶出量試験を行った。加えて、逐次抽出による化学分画法やイオンクロマトグラフ法によるフッ素定量により、廃棄物中のフッ素の状態を化学形態別に解析した。さらに、大型放射光施設SPring8において軟X線を照射光源に用いたμ-XRF/XAFSを実施し、フッ素汚染廃棄物の固体試料でフッ素のマッピング分析を実施し、化学洗浄の効果を精密に評価した。その結果、鉱さい、もえがら、ばいじんのような核となる廃棄物粒子の表面にフッ素を含む化合物が存在する廃棄物では、表面のフッ化カルシウムやフッ素が吸着している表面の金属成分をキレート剤が溶解することでフッ素を間接的に抽出することがわかった。一方、工場汚泥、無水石膏、二水石膏のようにフッ化カルシウムや硫酸カルシウムなどの結晶が集合している廃棄物では、フッ素が表面だけでなく廃棄物全体に分布した。キレート洗浄では、キレート剤が金属化合物の溶解または溶解平衡を促進することで、フッ素が徐々に抽出される除染メカニズムを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フッ素含有廃棄物に対する新規な環境修復技術の開発に加えて除染メカニズムの解明を達成して、国際的に優れた研究成果を挙げた。成果報告を積極的に行い、環境科学および環境工学分野のトップ10%ジャーナルを含む国際学術誌への複数掲載や国内外の学会における優秀賞受賞等を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
新規技術の開発は計画に従って順調に進展している。最終年度には、現状よりも広範囲のpH領域で機能性を発揮できる化学薬剤の設計に取り組むとともに、本除染技術の社会実装化を念頭において、洗浄液中のフッ素回収プロセスや化学洗浄のスケールアップ実験に共同研究企業と連携して取り組む。
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