研究課題
Mn酸化集積培養系から分離された低栄養細菌R1-5株及びR1-7株の培養試験を行った。Mn(II)及び13C標識重炭酸ナトリウムを含む無機塩培地に化学合成したMn酸化物(δ-MnO2)、市販の鉄酸化物(Fe2O3)、またはシリカゲルを添加して振とう培養した。その結果、両株とも何れの固相物質存在下でも13Cの取り込みは促進されなかった。これらの菌株について全ゲノム解析を行った結果、カルビン回路等の独立栄養的な炭酸固定経路は有しておらず、昨年度の結果と併せると、部分的に炭酸固定を行うが培地中に混在する微量有機物を主として利用していると推察された。一方、集積培養系のRNA-seq解析の結果、メタノール/エタノール酸化酵素、水素酸化酵素、CO酸化酵素の発現量が多く、集積系内の細菌群が大気中から供給される微量の基質を利用していると推察された。一方で、カルビン回路の酵素遺伝子の発現も確認され、特にRubiscoの発現量は他と比べて相当に高いことが明らかになった。低栄養細菌の増殖による有機物供給とは別に、独立栄養細菌の炭酸固定も寄与する可能性が示された。Mn酸化集積培養系を導入したバイオリアクターによるMn・亜鉛含有坑廃水の処理試験では、連続運転より回分運転の方がスタートアップに要する期間が短縮できることが示されていた。この要因として、回分運転時の方が処理槽内のATP含量が有意に高く、生物活性が高いことが挙げられた。両運転時に亜鉛を含有するMn酸化物であるウッドルフ鉱の生成が認められたが、Mn酸化数は回分運転時+3.73、連続運転時+3.54であり、回分運転時の方がMn酸化は進行していることが示唆された。さらにアンプリコン解析の結果、低栄養細菌として分離されたR1-5株とR1-7株の近縁種が優占しており、貧栄養環境で有機物供給の役割を担っているものと推察された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochemical Engineering Journal
巻: 203 ページ: 109187~109187
10.1016/j.bej.2023.109187