研究課題/領域番号 |
21H03652
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
佐川 志朗 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 教授 (30442859)
|
研究分担者 |
山田 由美 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 研究員 (00365496)
谷口 幸雄 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10252496)
河口 洋一 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (20391617)
田和 康太 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (20771348)
長谷川 雅美 東邦大学, 理学部, 教授 (40250162)
内藤 和明 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 准教授 (50326295)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | コウノトリ / 遺伝的管理 / 発信機 / 再導入 / 生息適地解析 / 生息ポテンシャル / MaxEnt / 自然再生 |
研究実績の概要 |
遺伝的多様性の評価では、前年度に開発したMHC遺伝子型タイピング法により、創始個体群が持つ22種類のMHCハプロタイプのうち13種類が検出され、繁殖個体の遺伝的多様性の維持にMHC領域の多様性が1つの指標になると考えられた。また、MIG-seq法を用いたゲノム全域からのSNPの検出では、検出されたSNP 数は146個となった。空間解析では、福井県および兵庫県豊岡市の放鳥個体を区別したモデリングにより、それぞれが異なる生息地選択を示すことが確認された。また、中国地方と四国地方では選択される環境要因に違いが見られた。以上より、今後の解析においてはコウノトリの出生地や放鳥拠点、日本のバイオームや環境特性を考慮する必要性が伺えた。新たなコウノトリの定着地である茨城県神栖市では、水系ネットワークが維持され、田内の排水不良箇所や土水路の存在によってコウノトリの餌となる水生動物が豊富に生息していることが確認された。徳島県鳴門市では、コウノトリの主要な餌であるアメリカザリガニと蓮田の水深そして植皮率と正の関連性が確認された。多工法が混在する兵庫県豊岡市では、各種農法水田、ソーラーパネル設置水田、ビオトープ、およびマルチトープなど多様な水域景観の存在は各景観それぞれに特徴的な水生動物群集が構築されるため、単一景観の集合体よりも全体の生物多様性が高まることが示唆された。以上の成果については、円山川自然再生推進委員会、同技術部会における遊水地計画や、鴻巣市コウノトリの生息域内保全実施計画策定有識者会議、利根川下流生態系ネットワークの検討、吉野川流域コウノトリ・ツルの舞う生態系ネットワーク推進協議会等において我々が委員として計画策定の技術指導を行った他、「~コウノトリ野生復帰グランドデザイン~12年間の評価と今後の課題(兵庫県立コウノトリの郷公園、平成6年3月28日)」に得られた成果を反映させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
空間解析については、当初の想定に反しモデル解析に組み込む要因が充分ではなく、ポテンシャルマップの再現性(説明力)が低いことが判明した。従って、研究遂行上、成果のとりまとめのためには多要因をふまえた内容にてマップを作成することが不可欠であり、再解析を行った上で、コウノトリの繁殖期および巣立ち後成長期まで(4月~10月)における現地調査による検証を再度行う必要が生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
・日本コウノトリ集団に最適化したMIG-seq法の樹立やMHC領域のタイピング法との統合などにより、ゲノム情報を利用した遺伝的多様性の評価法の確立し、その実用化を進める。 ・水田水域の景観要素として、ため池および河道内氾濫原も調査地に加え、豊岡市三宅地区で調査を継続する。それらの景観要素における生態的機能とコウノトリ利用の因果関係を把握し、最終成果に反映させる。 ・鳴門市でコウノトリが主に餌場とするレンコン田(有機農法、慣行農法)の生物群集について、下位から上位の各栄養段階の生物量を把握し、コウノトリの農地利用について最終成果に反映させる。 ・ポテンシャルマップを完成させ、全国的な成果普及に尽力する。
|