研究課題/領域番号 |
21H03662
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
大門 裕之 豊橋技術科学大学, 学生支援統括センター, 教授 (60335106)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 可搬式メタン発酵システム / 活性炭 / 発酵助剤 / 低廉化システム / 再生可能エネルギー / 電圧印加効果 |
研究実績の概要 |
メタン発酵システムは、バイオガスを発酵させて得られるバイオガスで発電を行う。近年、このシステムは災害時の非常用電源としても期待されている。研究代表者らは、そのような状況に適した可搬式で低廉化したメタン発酵システムを開発した。このシステムでは、災害時に必要とする場所へ移送した際、メタン発酵の迅速な再起動が重要となる。本研究では可搬式メタン発酵システムの再起動期間を短縮するアクセラレータの開発を目的とした。アクセラレータは2つの要素からなる。1つは食品廃棄物から作製する発酵助剤であり、もう1つは導電性素材を担体として用いることである。これら2つの相乗効果により再起動期間の短縮が期待できる。加えて、平常時においてもメタン発酵システムの効率向上が見込める。今年度は、これまでの成果を基に論文を一報、また今後の展開を見込み、学術論文一報を発表した。また、メタン発酵システムにおけるアクセラレータである発酵助剤と発酵触媒の効果および電圧印加効果について国内の学会発表にて三件の発表を行った。 発酵触媒に関する研究は、2021年度春までは、全く学会発表会で発表が見受けられなかったが、2022年度春には複数の発表があった。一方、電圧印可効果に関する発表は、2022年度春においても我々の研究室のみであった。 これらの研究実績を、各種セミナーや展示会においても紹介を行った。 得られた知見に基づき、新たな応用研究において複数の企業との共同研究を新たに始めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタン発酵システムにおいて、発酵を促進するアクセラレータとして用いられている活性炭を発酵触媒、食品残渣の乳酸発酵添加剤を発酵助剤、さらに電圧印可の位置づけを検討した。それぞれ、メタン発酵システムにおけるアクセラレーターとしての効果を発揮する各種条件を明らかにした。発酵触媒については連続式試験を行い、効果の持続性を確認し3か月間は少なくとも利用できることを明らかにした。活性炭を電極に用いて電圧印可を行った場合のメタン発酵促進効果を定量的に示した。 研究時や災害時だけではなく社会実装に向けた、アクセラレータ個々の開発や効果の検証は国内外でも例をみない。小規模であるからこそ取り扱うことができるメリットを社会にアピールした。さらに、持続的開発目標(SDGs)の基本理念に沿った研究開発の必要性を説き、社会へ研究開発の方向性も提言してきている。
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今後の研究の推進方策 |
メタン発酵システムに添加するアクセラレーターとして発酵助剤および発酵触媒の効果、さらには、メタン発酵槽への電圧印可効果が得られる条件において微生物群集構造解析を行い、微生物レベルからの効果を検証する。 一方、社会実装を見据えて、スケールアップしたより実機のプラントに近い連続式発酵試験装置を開発し、現場にて長期的に稼働させる。最終目的であるアクセラレータ(発酵助剤と発酵触媒)による相乗効果の検証に加え、電圧印加技術を開発し、さらなる相乗効果(再稼働時間の短縮、発酵効率の改善、バイオガス中のメタン濃度の向上)を確認する。 小規模低廉化メタン発酵システムは可搬式に限らず、海外、特に途上国での運用が容易にできることから、海外への普及促進を念頭に国際共同研究を開始する。
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