研究課題/領域番号 |
21H03665
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
秋月 真一 創価大学, プランクトン工学研究所, 講師 (60772340)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 微小重力環境 / 硝化 / 微細藻類 / 共生系プロセス / 尿処理 / 資源循環 |
研究実績の概要 |
本課題では、「月レゴリス申請-微細藻類・硝化菌共存系システム」による月面居住地での資源循環型処理技術の確立に向けて、微小重力環境が微細藻類と硝化菌の物質代謝に及ぼす影響の解明と、微細藻類培養に適した月レゴリスの尿中浸漬条件の最適化を行う。 本年度は、三次元的に試料を回転させることで模擬的に微小重力環境を作り出す3-D回転装置を用い、異なる重量環境が硝化菌活性に与える影響を評価した。反応槽には有効容積110 mLのセーラム瓶を、種汚泥には約2か月間一定環境下(人工アンモニア含有廃水、25±1℃、溶存酸素濃度>2 mg/L)で事前順養した硝化汚泥を用いた。3-D回転装置をインキュベーター内に設置し、1/1000 g条件(国際宇宙ステーション)と1/6 g条件(月面)とした条件と、通常重力(1 g)として恒温振盪槽内に置いた条件を設けた。初期汚泥投入量を350 mg-VSS (volatile suspended solids:揮発性浮遊固形物濃度)/Lとし、25±1℃で48時間の回分活性試験を4連で実施した。その結果、1、1/6、1/1000 g条件で0.37±0.06、0.40±0.06、0.46±0.06 mg-N/g-VSS/hourの活性を示し、重力低下に伴い活性が高まる傾向を示した。しかし、多重比較検定(Turkey法)ではいずれの条件間でも有意差は確認されず、重力差による影響の有無は明確には示されなかった。この結果は、月面でも地上と同程度の硝化活性が得られることを示唆し、提案システムを構築する上で硝化菌活性に関しては特段問題が生じない可能性が示された。しかし、数十日から数か月以上の長期的な運転を行った際の活性に与える影響については未知であり、これについては来年度以降に評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、微小重力環境が硝化菌と微細藻類の物質代謝に及ぼす影響を解明することを目的としていた。硝化菌活性に関しては定量的な評価を行えたが、微細藻類に関しては実験結果がまだ得られておらず、当初の予定よりもやや遅れている。当初予期していなかった点として、3-D回転装置の重力条件を変化させた場合、装置の回転速度が予想以上に変化し、結果として攪拌度合いが異なるように見えたことが挙げられる。例えば1/1000 gでは非常にゆっくりと、1/6 gでは比較的早い速度で回転するため、物質代謝に及ぼす影響が、重力の差によるものか、攪拌度合いの差によるものか、という判断が難しいという問題が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、1/1000~1 gの重力環境の変動は、硝化菌活性に有意な影響を与えないという結果が得られた。しかし「現在までの進捗状況」で記述した通り、3-D回転装置で重力環境を制御する際の攪拌度合いの差が微生物活性に影響を与える可能性が拭えず、重力差の影響をより正確に評価するためには、攪拌度合いの差が活性に与える影響を定量的に評価する必要があると考えられた。そのため本年度は、当初予定していた「微細藻類培養に適した月レゴリスの尿中浸漬条件の最適化」を行う前に、新たに異なる攪拌強度(0~180 rpm等)が硝化菌や微細藻類の物質代謝に与える影響を1 g環境下で評価する実験、を加える。もし攪拌強度の差により顕著に活性が変化した場合、3-D回転装置で重力環境を制御(1/1000、1/6 g)した際の攪拌強度が1 g条件におけるどの攪拌強度に該当するかを判断する実験を加え(溶脱可能な色素含有ゲルを添加する等を想定中)、攪拌度合いの影響を考慮した上で、重力環境の違いが微生物活性に与える影響を評価する。
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