研究課題/領域番号 |
21H03668
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 昌広 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 准教授 (20503428)
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研究分担者 |
小杉 隆信 立命館大学, 政策科学部, 教授 (30273725)
石井 敦 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (30391064)
渡辺 真吾 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), センター長代理 (50371745)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気候変動 / シナリオ / 協創 / ステークホルダー / ELSI |
研究実績の概要 |
研究班1と2共同で2021年度のオーストラリア、インド、日本、フィリピンで実施したオンライン・アンケート調査の結果を分析した。この調査では、回答者に対して緩和努力と気候のティッピングポイントが異なる2つの太陽放射改変(SRM)シナリオを提示した。国ごとの回答の違いは、シナリオ間の違いに比べて大きかった。インドとフィリピンの回答者は、日本とオーストラリアの回答者に比べて、気候変動への関心が高く、SRMへの支持も高い。しかし、SRMの環境リスクやガバナンスリスクに対する懸念の声が多いのは共通しており、ガバナンスの議論の必要性を示す。成果は東京大学のワーキングペーパーとして公表した(http://hdl.handle.net/2261/0002006063)。アンケート調査に加えて、トランジション研究のレビューの中でシナリオ研究との関連性について扱った昨年度公表のワーキングペーパーを、環境経済・政策学会の学会誌で査読付き論文として公表した。またSRMの18のシナリオを提示した国際共著論文に、ガバナンスの観点から貢献した。 研究班3は脱炭素型の新エネルギーや極端な地球温暖化対策について、将来の技術変化を考慮した将来シナリオ検討に寄与しうるような数理モデルの調査分析を進めた。これに加え、SRMなどのジオエンジニアリングに関する国際会議に出席して、より広範な関連研究に関して情報収集を行った。 また研究班2と3共同で、昨年度に収集した主にSRMのガバナンス、統合評価、地球システムモデル・シミュレーションに関する国際的な動向について、グリーンフォーラム21にて講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究班1と2は成果概要で述べたように共同でワーキングペーパーを発表した。また、参加型シナリオ開発の文献レビューを行っている。 研究班3は米メーン州で行われたThe 2022 Gordon Research Conference on Climate Engineeringに出席し、成層圏エアロゾル注入(Stratospheric Aerosol Injection: SAI)、雲の白色化(Marine Clound Brightening)、巻雲の薄化(Cirrus Cloud Thinning)に関する様々なアプローチの観測的研究やシミュレーション研究、それらの影響評価やガバナンス等、広範な関連研究に関して情報収集を行い、本研究の参加者に共有した。また極端な地球温暖化対策である太陽放射改変について、統合評価モデルでの分析例の調査、モデル実装の試行とともに、その利用(あるいは利用禁止)シナリオの考察を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究班1・2はワーキングペーパーの内容を発展させたものを査読誌に投稿する予定である。また参加型シナリオのレビューとアンケートの分析の両者を踏まえ、ガバナンスへの含意を分析していく。 研究班3についてではあるが、最新の研究やこれまでの研究の振り返りについて、Geoengineering Model Intercomparison Project (GeoMIP)の運営委員会からAtmos. Chem. Phys.誌にOpinionを投稿した。Discussion paperとして出版され、現在査読中である。これに関して日本語の解説を執筆し、太陽放射制御(Solar Radiation Manegement: SRM)に関する最新の知見を普及させるとともに、本研究でのシナリオ分析に役立てる。 また、太陽放射改変や脱炭素エネルギー技術についての数理モデル評価のシナリオ分析への応用や、ステークホルダーとの対話に資するような分析結果の示し方に関する検討を行う。
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