研究課題/領域番号 |
21H03675
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
馬場 健司 東京都市大学, 環境学部, 教授 (40371207)
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研究分担者 |
小杉 素子 静岡大学, 学術院 工学領域, 准教授 (20371221)
岩見 麻子 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (80750017)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 政策波及 / 交渉シミュレーション / 気候変動適応策 / 脱炭素政策 / ステークホルダー分析 |
研究実績の概要 |
・適応策の実効性の概念と追加的適応策の抽出 先行研究のサーベイより、適応策の実効性概念とその計測指標の一例として、リスクや脆弱性の低減(潜在的な気候ハザードに対する生物物理的、社会的脆弱性)、環境の改善(生態系の健全性、環境の質)、制度の強化(制度・ガバナンス構造、パートナーシップ、コンフリクト解決)などが考えられる。また、全国の地方自治体(都道府県・政令指定都市)の適応計画のうち、直近の3年間で更新のあったものについて、科学的知見の活用状況、適応策の実施状況をなどの内容を分析し、一部の自治体において追加的適応策が実施されていることが確認された。 ・一般市民やステークホルダーの気候変動政策の受容性分析 一般市民の暑熱分野における適応策の受容性について、首都圏在住者を対象とするナッジ理論を応用した複数のメッセージを用意して質問紙調査を実施した結果、近親者から利他主義を強調したメッセージが態度変容に寄与する傾向がみられた。また、気候変動影響と緩和策・適応策への受容性について、ステークホルダー調査を、北海道ニセコ、熊本県黒川温泉等で進めた。 ・交渉シミュレーションの試行的開発 これまでに沿岸域における防災分野の適応策を題材に実施したステークホルダー分析結果等を基に、交渉シミュレーションを試行的に開発し、研究メンバーの担当授業にてオフラインで試行し、振り返りからは特に問題は発生しなかったと判断される。また、過去に開発した脱炭素政策に関する交渉シミュレーション(風力発電立地による環境コンフリクトを題材とするもの)を研究メンバーの担当授業において、これまでオフ/オンラインで実施してきており、これらの事前事後質問紙調査データの比較分析を行ったところ、議論の進め方や内容については評価スコアの平均値に有意差は観察されなかったが、各アクターへの信頼度についてはオフ/オンラインで有意差が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記それぞれの研究項目の進捗状況は概ね順調である。「適応策の実効性の概念と追加的適応策の抽出」については、概念整理についてもう少し詳細なレベルで進める必要があるが、「一般市民やステークホルダーの気候変動政策の受容性分析」については、当初の計画では2年目からの実施予定であったが、一部を前倒しする形で進めることができた。「交渉シミュレーションの試行的開発」についてはほぼ予定どおりに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
「適応策の実効性の概念と追加的適応策の抽出」については、概念整理についてもう少し詳細なレベルで進め、追加的適応策がみられた自治体担当者への聞き取り調査などから、関連行政計画との計画相互の関連性を明らかにし、波及性が高いものの実効性が高くない適応策と、実効性が高いものの波及性が低い適応策を分ける要因を探る。 「一般市民やステークホルダーの気候変動政策の受容性分析」については、「「自分事化」指標の抽出」を追加し、「自分事化」を促す新しい変数や指標の設定を試みる。また、ニセコや熊本などいくつかの地域社会におけるステークホルダーの気候変動影響と緩和策・適応策への受容性についても調査を継続する。 「交渉シミュレーションの試行的開発」については、昨年度に試作したものを本格的に実施し、質問紙調査を通じた学習効果を検証する。気候変動適応策・脱炭素政策を題材とするさらに新たな交渉シミュレーションについても開発を検討する。また、過去のデータを用いたオフ/オンラインで有意差が認められた要因については、交渉プロセスに係わるテキストデータ(交渉の経緯と結果に係わる記述)のさらなる分析を行う必要がある。
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