研究課題/領域番号 |
21H03695
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
後藤 寛 横浜市立大学, 国際教養学部(都市学系), 准教授 (40333710)
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研究分担者 |
黒田 賢治 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 助教 (00725161)
加藤 博 一橋大学, その他部局等, 名誉教授 (10134636)
臼杵 陽 日本女子大学, 文学部, 教授 (40203525)
三沢 伸生 東洋大学, 社会学部, 教授 (80328640)
熊倉 和歌子 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (80613570)
上山 一 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (80626226)
勝沼 聡 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (90593202)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エジプト / スエズ運河 / アレクサンドリア / カイロ / 横浜正金銀行 / リン鉱石 / 貿易 / タバコ |
研究実績の概要 |
前年度収集した資料を基に作業を進め、またワークショップでの議論から以下の成果を挙げた。 エジプトをめぐる交易については引き続き①エジプト沿岸各港出入港船舶の所属(旗別)船舶数、船舶規模等のデータの経年分析からアレクサンドリア港をハブとする環地中海交易ネットワークとポートサイード港およびスエズ運河をハブとする遠洋航路および地中海ー紅海沿岸交易との差異、船舶の特徴、とくにヨーロッパ列強諸国それぞれとのつながりを明らかにした。スエズ運河通過船舶はイギリスを中心にしながらもイタリア、ドイツ等々ヨーロッパ列強それぞれの植民地戦略を解読した。 日本との関係については個別の貿易内容に焦点を当て②タバコ輸出入においては世界市場内での評価と品質により日本エジプト間での輸出入が双方向にあることを国内産地(専売公社支店)も踏まえて整理③リン鉱石の輸入については日本の稲作におけるにおける過農薬農法、品種改良の裏付けとなること④雑貨輸出については物品ごとの軽工業分布から当時の日本国内の工業地帯ごとの性格の違いを押さえ、それぞれを後背地とする港湾の特徴、横浜正金銀行におけるそれぞれの支店の為替取扱につながる地域性を整理するなど双方の産業振興の具体的な様を明らかにした。 これら貿易には裏付けとなる外国為替が不可欠であり、それらを探る中で決済手段の重要性を認識した。当時の日本からの中東貿易においては商社主導での双方の民間銀行を介した取引と、国策銀行としての横浜正金銀行が関わる取引それぞれの特徴を整理した。横浜正金銀行の組織の理解のために日本金融史の白鳥圭志氏を講師に招いたワークショップを開催し銀行組織および日本の視点からの対エジプト貿易の理解に向け大きな収穫を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年冬までコロナ禍のため調査目的でのエジプト入国ができず、部分的には現地在住研究者に代理調査を依頼したものの進捗が大幅に遅れた。結局2023年夏になって前年度計画で予定していた大規模な現地調査を実施し当初から想定していたデータを収集することができたが、そこで収集したデータのデジタル化処理、分析検証、メンバー間での議論など順を追って進める予定だったスケジュールが押していき、最終目標の達成に向けて時間不足となっている。 なおその間に代替策として国内外の未整理史資料の調査収集を行い、それらから得られた情報の整理およびメンバー間の活発な議論から、当初計画で想定していなかった成果もある。
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今後の研究の推進方策 |
日本エジプト貿易の多様な側面がみえてきたことから、アレクサンドリアよりはスエズ運河の存在にウエイトを置いた分析を進めることとし、現地で収集した史資料に国内外で収集した資料、とくに東大経済学部資料室で入手した未整理史料の解読・分析に力を入れて大戦間期のエジプトをめぐる日本側の動向を横浜正金銀行の動向をその組織の理解まで含め重点的に解明する計画である。
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