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2021 年度 実績報告書

社会運動における生存権・生存思想の影響とその射程に関する基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 21H03702
研究機関東京外国語大学

研究代表者

友常 勉  東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 教授 (20513261)

研究分担者 高 榮蘭  日本大学, 文理学部, 教授 (30579107)
石田 智恵  早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (50706661)
武内 進一  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60450459)
上原 こずえ  東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (60650330)
キム ウネ  明治学院大学, 国際平和研究所, 研究員 (70875799)
野平 宗弘  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (80711803)
呉 世宗  琉球大学, 人文社会学部, 教授 (90588237)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード東アジア / 生存思想 / 生存権 / 社会運動
研究実績の概要

COVID-19の感染拡大という状況ではあったが、デスクリサーチを中心にした資料収集とテキスト分析を体系的に進めることができたと考える。また、制限された範囲ではあったが、沖縄をはじめとする国内調査を進めることができた。また、東京外国語大学の集中講義や連続講演会を継続することで、科研メンバーの相互討論の機会を重ねることができた。これによって初年度の研究課題はおおむね達成されたといえよう。なお、研究計画初年度にあたる2021年度の研究体制にもとづいて、それぞれは次の調査研究を遂行した。友常は沖縄における崎山多美の文学的実践を通して沖縄における基地と軍事性暴力に対する対抗的言説を、さらに新左翼運動の総括的議論の検討を行った。野平宗弘は学会報告でベトナムの思想家ファム・コン・ティエンにおける西洋批判と西洋におけるその受容にかかわる分析を進めた。上原こずえは1970年代沖縄青年の反差別・反開発闘争の考察を進めた。武内進一はルワンダを中心に、新自由主義のもとで進行するアフリカにおける土地改革政策の分析を進めた。高榮蘭は東アジアの冷戦下での「レイプ、男性セクシュアリティ」についての分析を、大島渚や大城立裕のテキストを通して考察した。呉世宗は韓国‐済州島、沖縄を中心に、「沖縄構想」をめぐる在日朝鮮人の関わりについての考察を進めてきた。石田智恵はアルゼンチン強制失踪者と家族をめぐる言説の考察を進めた。これらの調査研究を通して、政治的暴力や差別に対する対抗的言説を明らかにするだけでなく、社会運動におけるオルタナティブな生存権と生存思想を発掘していく作業を進めることができたといえよう。また、研究代表の友常、研究分担者の上原、キムウネは、東京外国語大学で開催された集中講義を組織し、冷戦期東アジア、とりわけ韓国、日本、沖縄における政治的暴力の系譜についての議論を進めることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

COVID-19の感染拡大という状況のもとで、デスクリサーチを中心にした資料収集とテキスト分析に比重が置かれた。ただし、沖縄における現地フィールド調査の機会を保証し、相互討論と共通認識は形成されたと考える。以下の課題はそれぞれ論文化することができた。すなわち、友常の沖縄における基地と軍事性暴力に対する対抗的言説と新左翼運動の総括的議論、野平宗弘のベトナムの思想家ファム・コン・ティエンを通してベトナムにおける1960年代の社会運動の思想、上原こずえの1970年代沖縄青年の反差別・反開発闘争の考察、武内進一の新自由主義のもとで進行するアフリカにおける土地改革政策の分析、高榮蘭の東アジアの冷戦下でのセクシュアリティについての分析、呉世宗による韓国‐済州島、沖縄を中心にとした文学と社会思想の考察、である。また石田智恵はアルゼンチン強制失踪者と家族をめぐる言説の考察を進めることができた。社会運動におけるオルタナティブな生存権と生存思想を発掘し、さらに、これを人文学に問題提起できる内容に仕上げていく準備はできたものと考える。また、東京外国語大学での連続講演会や集中講義を活用することで、対面での研究会やシンポジウムに代わる場を設定することができたことも、指摘しておきたい。

今後の研究の推進方策

研究計画初年度のデスクリサーチを中心にした資料収集とテキスト分析を踏まえて、次年度は、沖縄における現地フィールド調査の機会を保証し、相互討論と共通認識を形成していく予定である。友常は沖縄における基地と軍事性暴力に対する対抗的言説と新左翼運動の総括的議論を継続する。野平宗弘はベトナムの思想家ファム・コン・ティエンを通してベトナムにおける1960年代の社会運動の思想を考察する。上原こずえは1970年代沖縄青年の反差別・反開発闘争の考察を継続する。武内進一は新自由主義のもとで進行するアフリカにおける土地改革政策の分析を継続する。高榮蘭は東アジアの冷戦下でのセクシュアリティについての分析を継続する。呉世宗は韓国‐済州島、沖縄を中心にとした文学と社会思想の考察を進める。石田智恵はアルゼンチン強制失踪者と家族をめぐる言説の考察を継続する。これらの調査研究を通して、社会運動におけるオルタナティブな生存権と生存思想を発掘し、さらに、これを人文学に問題提起できる内容に仕上げていく。また、東京外国語大学での連続講演会や集中講義を通して、冷戦期東アジア、とりわけ韓国、日本、沖縄における政治的暴力と生存思想についての共同討議を進めていく。

  • 研究成果

    (23件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 4件) 図書 (6件)

  • [雑誌論文] 〈監獄化〉状況に住まうこと2021

    • 著者名/発表者名
      友常勉
    • 雑誌名

      福音と世界

      巻: 76巻4号 ページ: 32,37

  • [雑誌論文] 生政治と同和行政・人権行政2021

    • 著者名/発表者名
      友常勉
    • 雑誌名

      部落解放研究

      巻: 214号 ページ: 4,25

  • [雑誌論文] 東アジア冷戦と脱境界的に書くこと(韓国語)2021

    • 著者名/発表者名
      高榮蘭
    • 雑誌名

      尚虚学報

      巻: 61 ページ: 517, 582

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 翻訳されるレイプと男性セクシュアリティー大島渚『絞死刑』と大城立裕『カクテル・パーティー』のあいだから」2021

    • 著者名/発表者名
      高榮蘭
    • 雑誌名

      日本学報

      巻: 126 ページ: 39,59

  • [雑誌論文] 文学の路上を生きる : 在留資格から考える「日本語文学」という落とし穴2021

    • 著者名/発表者名
      高榮蘭
    • 雑誌名

      日本近代文学

      巻: 105 ページ: 95, 109

    • DOI

      10.19018/nihonkindaibungaku.105.0_95

  • [雑誌論文] 未完の沖縄構想と在日朝鮮人文学者の 思想との連結のために2021

    • 著者名/発表者名
      呉世宗
    • 雑誌名

      日本学

      巻: 53 ページ: 1,26

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 風土の中の風土、そして動物たち――金時鐘『日本風土記』2021

    • 著者名/発表者名
      呉世宗
    • 雑誌名

      済州作家

      巻: 73 ページ: 211,220

  • [雑誌論文] 詩を生きる「社会主義者(サフェジュイジャ)」――金時鐘『地平線』を読む2021

    • 著者名/発表者名
      呉世宗
    • 雑誌名

      教育国語

      巻: 22 ページ: 4,24

    • 査読あり
  • [学会発表] 今日のアフリカにおける土地紛争の背後にあるもの2021

    • 著者名/発表者名
      武内進一
    • 学会等名
      日本平和学会
  • [学会発表] アフリカ研究からブラック・ライヴズ・マターを考える―地域研究への示唆2021

    • 著者名/発表者名
      武内進一
    • 学会等名
      JCAS年次総会一般公開シンポジウム「地域研究とグローバル・アジェンダ――『濃い研究』のもたらす視座――」
    • 招待講演
  • [学会発表] 「植民地」なき植民地議論が「植民地」に遭遇したらー中野重治「雨の降る品川駅」からー」2021

    • 著者名/発表者名
      高榮蘭
    • 学会等名
      社会文学会
  • [学会発表] How does literature talk about neoliberalism, gender, and memory?:Between "Watashi Mo Jidai no Ichibu Desu [I, Too, Am a Part of This Era] " and Sakiyama Tami’s "Tsukiya, Aran"2021

    • 著者名/発表者名
      高榮蘭
    • 学会等名
      AAS 2021 Annual Coference
  • [学会発表] 出版帝国の『満・鮮』をめぐる戦争2021

    • 著者名/発表者名
      高榮蘭
    • 学会等名
      台湾清華大学台湾文学研究所・東アジア植民地文学研究会共催「2021 東亜植民地主義と文学会議」
    • 招待講演
  • [学会発表] 民衆の視点からの体験の継承と出版2021

    • 著者名/発表者名
      上原こずえ
    • 学会等名
      東京外国語大学国際日本研究センター【比較日本文化部門主催 国際ワークショップ】東アジア連続講演会『境界と路上を考える』特別企画「沖縄「復帰」50年という問い」
    • 招待講演
  • [学会発表] 日本社会の地域差別, 日本社会におけるサバルタン研究:東アジアの疎通と相生2021

    • 著者名/発表者名
      友常勉
    • 学会等名
      韓国外国語大学校
    • 招待講演
  • [学会発表] A critique against the concept of ‘representation’ by a Vietnamese poet-thinker and the possibility of Eastern thought2021

    • 著者名/発表者名
      野平宗弘
    • 学会等名
      第11回CAASシンポジウム 2021年11月11日 the Consortium For Asian and African Studies
  • [学会発表] Pham Cong Tien’s ontological dialogue with Martin Heidegger and Henry Miller2021

    • 著者名/発表者名
      野平宗弘
    • 学会等名
      Asien-Afrika-Institut, University of Hamburg
  • [図書] 文学者の反核声明と韓国民主化支援の時代ーHIROSHIMA・冷戦・光州ー(日本語)坪井秀人・宇野田尚哉編『対抗文化史 冷戦期日本の表現と運動』2021

    • 著者名/発表者名
      高榮蘭
    • 総ページ数
      367
    • 出版者
      大阪大学出版会
    • ISBN
      9784872597394
  • [図書] When African Potentials fail to work: The background to recent land conflicts in Africa, in African Politics of Survival Extraversion and Informality in the Contemporary World2021

    • 著者名/発表者名
      武内進一
    • 総ページ数
      308
    • 出版者
      Langaa RPCIG
  • [図書] 海を渡る記憶と遠ざかる身体――金在南「鳳仙花のうた」と崎山多美「アコウクロウ幻視行」,思想・文化空間としての日韓関係――東アジアの中で考える2021

    • 著者名/発表者名
      呉世宗
    • 総ページ数
      196
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      4750351768
  • [図書] 残余の声を聴く――沖縄・韓国・パレスチナ(共著)2021

    • 著者名/発表者名
      呉世宗
    • 総ページ数
      296
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      4750352241
  • [図書] 東京外国語大学における「国際日本学」,『環太平洋から「日本研究」を考える』2021

    • 著者名/発表者名
      友常勉
    • 総ページ数
      191
    • 出版者
      国際日本文化研究センター
    • ISBN
      9784910171005
  • [図書] ある「母」の生成 ― アルゼンチン強制失踪者の哀悼と変わりゆく家族, 『ジェンダー暴力の文化人類学――家族・国家・ディアスポラ社会』2021

    • 著者名/発表者名
      石田智恵
    • 総ページ数
      472
    • 出版者
      昭和堂
    • ISBN
      9784812220184

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公開日: 2023-12-25  

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