研究課題/領域番号 |
21H03733
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
河野 直樹 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (60800886)
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研究分担者 |
篠崎 健二 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10723489)
柳田 健之 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (20517669)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 励起子 / シンチレータ |
研究実績の概要 |
本研究では、多孔質ガラスに様々な次元性を有する有機無機ペロブスカイト型化合物を導入した新規複合材料を作製し、その発光特性及び放射線応答性を評価する。材料作製と特性評価を通じて、大容量高速応答シンチレータへの応用検討を行う。本年度は、三次元及び二次元有機無機ペロブスカイト型化合物を、多孔質ガラスに導入した複合材料を作製し、その光学特性を調べた。三次元有機無機ペロブスカイト型化合物であるMAPbCl3(MA:メチルアミン)及びMAPbBr3を導入した複合材料において、有機無機ペロブスカイト型化合物の自由励起子由来のシンチレーションが複合材料から生じることがわかり、光励起時とX線励起時の光学特性(発光波長、発光寿命等)がほぼ変わらないことを明らかにした。さらに、量子井戸構造を有する(C4H9NH3)2PbBr4、(C6H5CH2NH3)2PbBr4、(C6H5C2H4NH3)2PbBr4をそれぞれ多孔質ガラスに導入した複合材料も作製し、その発光特性を調べた。その結果、二次元量子井戸構造を有する有機無機ペロブスカイト型化合物を導入した複合材料において、光励起時及びX線励起時において、自由励起子由来の発光と短い発光寿命を示すことが明らかとなった。さらに、量子収率の高い有機無機ペロブスカイト型化合物を導入した複合材料が、光励起時及びX線励起時で高い発光量を示す傾向があることが明らかとなった。以上の結果から、導入する有機無機ペロブスカイト型化合物の光学特性の向上が、当該複合材料の特性向上に不可欠であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、多孔質ガラスに三次元構造や二次元量子井戸構造を有する有機無機ペロブスカイト型化合物を導入した複合材料を作製し、その光学特性を評価した結果、光励起時及びX線励起時に自由励起子由来の発光特性が観測されることを明らかにした。さらに、導入する有機無機ペロブスカイト型化合物の発光量の増加により、複合材料の発光量が増加することを突き止めた。以上の結果から、当初の予定をおおむね達成した状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、二次元量子井戸構造を有する有機無機ペロブスカイト型化合物の無機層組成を操作した化合物を作製し、その化合物を多孔質ガラスに導入した複合材料を作製する。無機層に異種金属イオンを添加することで、有機無機ペロブスカイト型化合物の光励起時及び放射線励起時の発光量が向上することが知られている。当該複合材料において、発光量向上効果が生じるかを調べる。具体的には、X線励起時におけるシンチレーションスペクトルやガンマ線励起時におけるパルス波高スペクトル、X線励起時のシンチレーション時間プロファイルの測定を行うことで、放射線励起時における発光量や発光寿命の評価を行う。さらに、本年度では、有機無機ペロブスカイト型化合物に限らず、様々な有機無機ハイブリッド材料の多孔質ガラスへの導入を検討する。近年、ペロブスカイト型構造に限らず、様々な構造を有する有機無機ハイブリッド材料が登場している。本研究では、0次元構造や1次元構造を有する有機無機ハイブリッド材料を多孔質ガラスに導入した複合材料を作製し、その光物性及び放射線応答性を評価する。
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