研究課題
(1) 単ピクセル型TES型マイクロカロリメータの開発従来より低い動作温度(転移温度102 mK)のTES(Transition-Edge Sensor)温度計素子に1 mm x 1 mm x 1 mmのビスマスをガンマ線吸収体として取り付けた単ピクセル型TES型マイクロカロリメータにコバルト60からのガンマ線を照射して性能評価を行なった。信号応答は線形で、コバルト60からの1.17 MeVと1.33 MeVのガンマ線に対するエネルギー分解能はそれぞれ0.83 keVと0.95 keVであったが、雑音信号比から推定されるエネルギー分解能として 0.50 keVが得られたため、信号波形のガンマ線入射位置依存性や熱浴温度の揺らぎの影響を改善することができれば、この素子でMeV領域のガンマ線に対しても0.50 keV程度のエネルギー分解能が実現できる見込みがあると考えられる。(2) シミュレータの開発従来の1次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータ用のシミュレータでは吸収体を熱容量を直列に接続したものとして簡略化して信号波形や雑音の周波数分布をシミュレーションしているが、本年度は熱容量を2次元に分布させることで2次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータ用のシミュレーションを行なった。また、これと並行して開発している有限要素法ソフトウェアを使用したシミュレータについても改良を施し、複雑な形状を持つTES型マイクロカロリメータの信号波形のシミュレーションに適用した。
2: おおむね順調に進展している
単ピクセル型TES型マイクロカロリメータの信号雑音比から推定されるエネルギー分解能として 0.50 keVが得られた。またこの結果は比較的振動が大きい冷凍機で得られたものであり、振動対策を施した冷凍機で動作させることができればさらに改善できる見込みである。
今後は20 mm × 20 mm × 1 mmのビスマスをガンマ線吸収体として2次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータを製作して位置検出実験を行う。またこれまでに開発した位置検出型TES型マイクロカロリメータのシミュレータの改良を行う。
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Journal of Low Temperature Physics
巻: 209 ページ: 518~524
10.1007/s10909-022-02902-w
巻: 209 ページ: 449~456
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